研究課題/領域番号 |
15K17142
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 靖人 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60534815)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域関与 / 地域ブランド / ひいき / 潜在的態度・顕在的態度 / 潜在連合テスト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、居住や訪問などの「地域関与」によって生じる特定地域ブランドへの「ひいき」行動に注目し、その顕在的・潜在的な情報処理プロセスを明らかにすることである。また、地域関与を高めることでネガティブなイメージを持っていた地域に対して「ひいき」行動を引き出す可能性を実践的に検証することも目的とする。 平成27年度は、地域関与が比較的引き出しやすい対象として「生鮮食品」の購入場面を想定し、これまでの研究で開発した「地域生鮮食品関与尺度」、「コミュニティ意識尺度」、及び「潜在連合テスト(Implicit Association Test;IAT)」を用いて、地域に対する潜在的なステレオタイプ(ネガティブ)の存在確認、潜在的態度と地域関与の関わり等について実験的検討を行った。 実験では、東日本大震災による原発事故で風評被害等が発生している東北地方と比較対象として九州地方を用いて検証を実施した結果、東北地方に対してはネガティブ意識を持つ集団があることが示された。また、その集団における地域(生鮮食品)関与の特徴を確認したところ、食品購入におけるブランド志向、現在の居住地への強い愛着傾向、地域の自己アイデンティティ化傾向が強いことが示された。 一連の実験結果から、特定の地域関与(本研究では生鮮食品等の地域ブランド産品の購買)において、我々は顕在的な態度表明とは別に、潜在的な態度を保持していることが確認された。これは従来の差別等に関するステレオタイプ研究とも一致するものである。一方でひいきもある種の差別的行動であり、社会的規範等から直接的には行動や態度に表明されにくいこともあるため、顕在的な態度測定だけではなく、潜在的な態度測定も同時に行うことの重要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域関与尺度(生鮮食品関与)の検証および潜在連合テストを持ちいた潜在的な地域意識の測定については予定通り実行した。28年度はさらに別の潜在的な態度測定手法を用いて地域態度の測定を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、特に感情的反応や行動に注目し、地域関与とひいき行動の関連性に注目し、引き続きひいき行動の情報処理プロセスの測定方法と発生パターン等の類型化の作業を進める。また、平成29年度以降はこれら研究成果に基づき、購買場面等において実際の情報表示をした際の顧客反応を測定するためのツール開発に繋げることを予定しており、28年度はその準備にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査出張及び年度末の人件費等(実験実施に関する助手謝金や調査謝礼)の執行を一部次年度に実施することとしたため
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度請求額と併せて調査出張及び人件費として使用し、研究を推進する。
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