研究課題/領域番号 |
15K17145
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩下 仁 九州大学, 経済学研究院, 講師 (30608732)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 市場志向 / 代替的志向性 / 製品開発 / マーケティング |
研究実績の概要 |
本年度は、わが国の製造業のマネジャーを対象とした調査結果に基づいて、様々な代替的志向性が製品の優位性に影響を与え、成果変数に及ぼす影響について、いくつかの仮説モデルの検証を試みている。1つ目の仮説モデルが、顧客志向と競争志向が、戦略感度やマーケティング資源の保有と配分などのマーケティング戦略立案力 (Menon, Bharadwaj, Adidam, and Edison 1999) 、そして、成果変数としての創造性に与えるインパクトに関するモデルである。 2つ目の仮説モデルが、顧客志向と競争志向が、一貫したコミュニケーションや、顧客とのコミュニケーションによる関係構築などを表すIMC (e.g. Lee and Park 2007)、そして、製品パフォーマンスに与える影響に関するモデルである。これらの2つの仮説モデルに関しては、検証した段階に留まっているため、2018年度は、学会報告を行なうと共に、主要な学会誌への投稿を行なう予定である。 他方、前年度からの課題であったデザイン志向尺度の開発に関しては、関連する研究のレビューを試みている。グランディット・セオリをベースにしてデザイン志向について命題を提示したVenkatesh, Digerfeldt-Månsson, Brunel, and Chen (2012) や、マネジャーとデザイナーという2グループに対して、デザイン志向のインタビューを試みたRocco and Risnik (2016) の研究について調べている。 以上を踏まえて、次年度からはデザイン志向の概念をさらに明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標は、以下の2つであった。第一に、前年度までに構築したいくつかの仮説モデルの検証である。第二に、デザイン志向の尺度開発であった。前者については、顧客志向や競争志向がマーケティング戦略立案力や創造性に与える影響、ならびに、顧客志向やブランド志向がIMCや製品パフォーマンスに与える影響に関する仮説モデルの検証を実施している。後者については、デザイン志向に関する先行研究のレビューが不足していたため、再度レビューを試みている。進捗が遅れている理由は、この後者において、デザイン志向の尺度開発に当たり、概念自体の全容を明らかにしたり、尺度開発の一連の手続きを経たりしたりすることに時間を要していることがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で取り上げている代替的志向性の1つであるデザイン志向に関しては、製品デザインという点で、代表者が研究協力者となっている基盤B研究と内容が一部重複している。したがって、基盤B研究と連携をとることで、当該プロジェクトの速度を速めるとともに、本研究の発展に寄与させることができると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 次の2つの理由があげられる。第一に、予定していたデザイン志向の尺度を開発したり、あるいは、デザイン志向を含めた代替的志向性が及ぼす影響を明らかにしたりするための調査実施に至れなかった。そのため、予定していた調査費が生じていない点である。第二に、前述したとおり2つの仮説モデルの実証分析には至っているが、国際学会等での報告には至っていない。そのため、必要となる旅費等の費用が計上されていない点である。 使用計画 使用されなかった研究費に関しては、分析が完了している仮説モデルに関する学会報告をしたり、デザイン志向の尺度開発における定性調査や定量調査、そして、デザイン志向をはじめとする、様々な代替的志向性が及ぼす影響を解明するための定量調査を実施したりすることで執行される。
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備考 |
本研究は、上記の海外機関との連携を図った国際共同研究を促進させることで、国内のみならず、海外の国際学術誌への投稿を試みる。
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