研究課題/領域番号 |
15K17148
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺崎 新一郎 九州大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (70732452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消費者行動 / 文化変容 / グローバリゼーション / イデオロギー / ミックス法 / グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
研究実績の概要 |
本年度は下記二点について研究を実施している。 第一に、当該研究テーマを包含する研究領域として、消費者イデオロギー効果研究のレビューをおこない、著者独自の四つの観点から研究潮流の整理を試みた。その結果、本研究の分析視角である文化変容概念のなかでも、消費者コスモポリタニズムへの着目に研究機会があることが明らかとなった。 第二に、文化変容のプロセスをミックス法、なかんずく順次的探索的戦略(sequential exploratory strategy)(Creswell et al., 2003)にもとづき明らかにするべく、次のような調査を実施した。まず、消費者コスモポリタニズムの代表的尺度であるC-COSMOおよび消費者ローカリズム尺度(ともにRiefler et al., 2012)を組み合わせた理論的サンプリングをおこない、CCGI(Cosmopolitan consumers with global identification、グローバル志向のコスモポリタン消費者)(Cannon & Yaprak, 2012)を抽出した。次に、CCGIに対してこれまでの生い立ち、関心、文化変容にいたった過程についてグラウンド・ツアー質問法(McCraken, 1988)にもとづき半構造化インタビューをおこなた。得られたデータはグラウンデッド・セオリー・アプローチ(Glaser & Strauss, 1967)を用いて分析され、コーディング、概念化とカテゴリーの作成、理論的飽和を経て、汎用プロセスモデルが生成された。その結果、四つの先行要因ならびに各要因を構成する複数のサブカテゴリー、文化変容を阻害する三つの要因が明らかになった。一連の調査を通じて、文化変容のプロセスは先行要因と結果要素、結果要素を通じたさらなる文化変容の進行という、循環型モデルとなっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
想定以上の進捗状況となった理由として、1)レビュー論文が当初予定よりも大幅に早く完成したこと、2)理論的サンプリングによって、インタビュー被験者が適切に抽出されたこと、などが挙げられる。結果的に、形成プロセスを構成する各概念の理論的飽和が早まり、考察に多くの時間を割くことができた。 また、本研究で用いたミックス法について理解を深めるべく、当該手法の研究論文における活用について論じた書籍を執筆した。このことで、リサーチデザインについての学術的理解が深まり、精度の高い発見事実を早期に導出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
文化変容のプロセスに関して、本年度は特にその先行要因について明らかにすることができた。今後の研究では、文化変容の結果要素について重点的に調査をおこなう予定である。結果要素の導出では、ミックス法にもとづいたデータの収集および分析が何度も実施されるため、費用が嵩むと考えられる。ゆえに、出張旅費などを削減し、可能な限り残りの研究費を調査研究に割くように心がけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
プレテストとして収集したデータが、質および量ともに充実していたため、研究費を割く必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
文化変容の形成プロセスは、先行要因と結果要素の二つに大別できるが、次年度使用額を用いて大規模なインターネット調査およびインタビュー調査を実施する予定である。純粋な調査費用として、130万円が見積られており、論文投稿や研究発表費用を鑑みると、資金的には余裕がない状況となっている。
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