研究課題/領域番号 |
15K17149
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大平 進 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (30709001)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マーケティング戦略 / ネットワーク / リレーションシップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ネットワーク型取引の視点から産業材市場における売り手と買い手の関係性についてメカニズムを明らかにすることである。 平成27年度は、リサーチギャップを明確にし、仮説導出をおこなう前準備として、文献レビューを実施している。第一ステップとして、マーケティング分野の主要ジャーナル6誌を対象に「ネットワーク」をキーワードとしてシステマティックレビューをおこなった。産業材市場の買い手と売り手のインタラクションに注目した多くの研究が、欧州の研究者を中心として発展してきたことが示された。その多くは定性的なアプローチを用いて現象を明確にしようとしているが、ここ数年は定量的な研究も増えてきていることがわかった(例.ネットワーク志向型の活動がパフォーマンスに与える影響を検証した研究など)。一方、近年の傾向として、ネットワークをキーワードとして直接用いないが、ネットワーク型取引の一端を扱う研究も増えてきている。こうした研究は、上述のシステマティックレビューでは把握することは難しい。 そこで、第二ステップとして、上記ジャーナルを対象として網羅的な確認作業を実施した。その結果、顧客の顧客による推奨行動を潜在顧客獲得に結び付けるレファーラルの研究や、従業員が社外の人間と非公式につながる実践共同体と呼ばれるコミュニティに関する研究など、焦点企業(あるいは焦点リレーションシップ)を中心としたネットワーク・プレーヤーに焦点を当てた重要な研究が、第一ステップのレビューの網をすり抜けて含まれていることが示された。 以上により、従来のインダストリアル・ネットワーク研究の延長上に視点を置いたのでは、研究潮流を見誤る危険性があることが示された。現在、上記2段階のレビューの結果をもとにリサーチギャップの把握が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワーク型取引の視点から産業材市場における売り手と買い手の関係性について扱った研究は、近年増加傾向にある。ところが、とりわけ国内において、この分野の研究潮流を前述の手法を用いて体系的に整理した研究はほとんどみられない。二段階アプローチによって示された研究潮流の整理は意義のあるものであった。 つまり、当該分野の研究は、(1)ネットワーク型取引の視点からプレーヤー間のリレーションシップを全体として扱う研究を把握する作業と(2)ネットワーク・プレーヤー同士の関係性を個々に扱う研究を俯瞰して把握する作業を同時進行で行わなければならないことを意味している。
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今後の研究の推進方策 |
文献レビューを通じて把握したリサーチギャップを埋めるため、仮説検証型の実証研究を計画している。そのために、購買担当者を対象としたインタビューをおこない、仮説導出をおこなう。続いて、上場企業の購買責任者を対象として、調査票による調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、インターネット調査を通じた予備調査をおこなう予定であったが、文献レビューを2段階でおこなった影響により、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
推進方策で述べた通り、上場企業の購買責任者を対象として調査票による郵送調査を実施する予定である。本調査に先立って、小規模な予備調査を必要に応じて実施する。
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