研究課題/領域番号 |
15K17152
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川端 庸子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60411683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インターネット販売 / EC(Electronic Commerce) / 越境EC / アリババ / 天猫国際(Tmall Global) / キリン堂 / 国際競争力 / PB商品の調達 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、PB商品の調達が流通業の国際化競争力にどの程度影響をあたえることができるのかを明らかにするため、日本と欧州における事例収集を行い、実証分析を行う。平成28年度は、日本のPB商品比率と国際競争力との関係について調査すること、第二に欧州系企業の欧州域内におけるPB商品の調達と国際出店について調査することについて取り組んだ。 第一の日本のPB商品比率と国際競争力との関係については、先行研究レビューや各社HPや国内のインタビューおよび実態調査研究を行った。第二に欧州系企業のPB商品の調達と国際出店については、各社HPなどによる情報収集と事例収集およびインタビュー調査や実態調査研究を行った。 近年、小売企業のPB商品は実店舗の店頭販売のみならずインターネットを通じて販売するEC(Electronic Commerce:電子商取引)分野においても重要な販売方法となっており、国内のみならず越境ECとして海外へ販売される事例がみられる。この越境ECに先駆的に取り組んでいる企業には、キリン堂やmikihouseに代表される関西に本社をもつ企業が多く、視察を行った。 また、イギリスのエディンバラ大学では、データ収集とともにビジネススクールを訪問し、教員が多く集まるラウンジにおいても広く多分野の研究者と国際交流および貴重な学術的意見を収集することができた。研究成果については、後述されるいくつかの図書や新聞に広く公表しており、今年度中に出版されなかったもののさらにいくつか執筆を既に行っている。 このような研究活動により、本研究の目的だった3つの疑問のうちの2つ目について解決策の事例を探索することができた。その疑問とは「優れたPB商品の調達を行い、国内にて競争優位を獲得したならば、差別化された商品による競争優位獲得の範囲は延長・拡大することはできるのか。」と、いうことであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、残された課題であった日本のPB商品比率と国際競争力との関係について調査すること、第二に欧州系企業の欧州域内におけるPB商品の調達と国際出店について調査すること、この2点について取り組んでいった。まず、PB商品販売と日本の国際競争力については、海外出店の視点のみならず、インバウンド消費やインターネットを通じた越境ECについて調査を行った。 日系小売企業は中国最大のEC企業であるアリババが運営する天猫国際(Tmall Global)に代上される越境ECサイトに出店する事例が見られた。アリババ・ジャパンは、この天猫国際へ出店する日本企業を募集・支援しており、インタビュー調査を行った。また、越境ECに先駆的に取り組んでいる企業には、キリン堂やmikihouseに代表される関西に本社をもつ企業が多く、視察調査を行った。これにより、本研究の目的だった3つの疑問のうちの2つ目について解決策の事例を発見することができたと考えている。 欧州については、イギリスのエディンバラ大学を訪問し、最新事例や情報収集を行うとともに学術交流および研究への貴重な示唆を得た。研究方法における変更点は2つある。それは、イギリスのリーズ大学への訪問の予定だったが、新しい人脈を得て、訪問先がエディンバラ大学になったことと、ネオグリッド社主催の国際カンファレンスに参加する意向であったものの開催日程が本務校の重要な校務日程と重なり参加できなかったことである。 しかしながら、同イギリス国内の大学であったこと、カンファレンスには参加できなかったものの国内において別のインタビュー調査により異なる角度からの情報収集を試みることができた。このように、若干の研究方法の変更はあったものの、実証的なデータや先行事例収集についても予定通り行うことができた。よって、研究の現在までの達成度は、概ね順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、日本市場における日系流通業と国外から市場参入してきた外資系流通業との事例を収集し、日欧比較を行う。ここでの調査対象としては、まず、日本事例として、2012年に単著『小売業の国際電子商品調達 ―ウォルマート、アジェントリクス、シジシーの事例を中心に―』にて以前とりあげた、日本のウォルマートである西友、イオングループ、シジシーを中心に行う。加えて、グローバル・マーケティング研究会に参加している方々からご紹介いただき、セブン&アイ・ホールディングスなどをはじめとしたその他流通企業もできるかぎり取り上げたいと考えている。 これらの事例を整理し、欧州市場の企業と日本市場の企業とを比較検討する。それにより、PB商品の調達比率は市場の流通構造によるものなのか、日系企業と海外企業によるPB商品開発・調達力といった企業内部による要因がどれ程影響しているのかが明らかになるであろう。 さらに、日本と欧州においてPB商品調達は流通業の国際化に寄与している代表的な成功事例については、それぞれ追加調査としてインタビューやアンケートおよび視察調査を行い、成功要因をより詳細に検討していく。さらに、日本のみならず必要な場合には、欧州の最新事例の収集も行いたい。 このような研究活動により、本研究の目的だった3つの疑問のうちの3つ目についての解答を明示したいと考えている。その疑問とは、日本と欧州においてPB商品調達は流通業の国際化にどのように寄与するのかということである。さらに、研究成果を広く社会に発信していきたいと考えている。
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