本研究の目的は,財務制限条項(債務契約に付される「約束事・誓約」のうち,特に借り手企業の財務諸表ないし会計情報に依拠したもの)の実態,影響,役割について実証分析を通じて理論的に解明することを目的とした。 その結果,抵触時の態様として,日本では契約を見直すというよりも表向きにはシンプルに返済が猶予される傾向にあることが示された。しかし,条項抵触にはその後の企業行動を暗黙裡に制限するという意味において実質的な罰則が存在することを示すことも確認された。このことから,直接的な制限を契約上,設けることが少ない一方で,条項抵触が債権者に対し借り手の活動を制限する有効な機会を提供していると結論付けた。
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