最終年度であり,最終的な調査のとりまとめを行っている。 調査の概要は,次のとおりである。まず,調査対象工場・事業所については,一般財団法人群馬経済研究所の会員企業のうち,県内の製造業の670工場の住所等をまとめてもらった。この670の工場に対して2018年6月に質問票を郵送で発送し,7月末までに回答を求めた。最終的なサンプルサイズは,181工場であり,返信率は27.0%となった。 調査においては,会計知識に関する変数を被説明変数とし,工場の生産形態,管理会計,規模などを説名変数とし,影響要因を探求した。 被説明変数となる会計知識については,古典的ではあるがSiegel (1996)によって開発された尺度を用いた。これらは,本調査による因子分析により4次元となり,ソフトウェアの利用能力,財務諸表作成・分析能力,諸科目の測定・評価・説明能力,専門的情報・統制システム運用能力が抽出された。 説明変数は,直近で業績に影響を与える生産システムや管理会計について探索した先行研究の翻訳尺度を採用した。生産システムは,工場の「カイゼン志向」,「リーン生産」の2つの尺度で測定した。管理会計については,工場の管理会計がシンプルなものに改善しているかどうかという「管理会計のシンプル化」と業績情報が視覚的に表示されているのかという「業績視覚化」の2つの尺度で測定した。 共分散構造分析の構造方程式の推定結果のうち,有意なものをあげると,次のとおりである。まず,「管理会計のシンプル化」は「財務諸表作成・分析能力」に10%で,それ以外の会計知識には5%の有意水準で正の影響を及ぼしていた。つまり,管理会計をシンプルなものにする上で,多次元で高いレベルの会計知識が必要とされるのである。また,リーン生産の採用は財務諸表作成・分析能力に,業績情報の視覚化はソフトウェアの利用能力に,それぞれ5%の有意水準で影響していた。
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