研究課題/領域番号 |
15K17166
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研究機関 | 富士大学 |
研究代表者 |
宮川 宏 富士大学, 経済学部, 講師 (10744063)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報開示 / 財務情報 / 非財務情報 / 企業情報 / アカウンタビリティ / 企業報告 |
研究実績の概要 |
企業は開示される情報の量と質の向上を行うために、企業の戦略、ビジネスモデルにかかる内容などの非財務情報を利用した説明の機会を増やしている。つまり、企業の情報開示活動が積極的になり、情報開示の質を高めようとしているのである。一年目の本研究では、強制開示、任意開示における企業情報の理論研究を中心に、3つの視点から研究をおこなった。一年目の研究内容は次のとおりである。 第一に、先行研究のレビューにより、企業情報を会計情報、財務情報、補足情報、経営情報とに分類し、それらの情報内容、特質と有用性を明らかにした。本検討をおこなうことで、企業情報に係る概念を整理したうえで、情報開示の対象となる情報内容を明らかにした。第二に、企業実態をよりいっそう示す開示フレームワーム構築に向けてもあわせて研究を進めた、財務報告概念の外延拡張、財務報告における企業情報の境界の視点から検討した。具体的には、財務情報や、非財務情報といわれる注記情報や戦略内容、コーポレート・ガバナンス情報、MD&A情報、または経営者の主観や裁量に関する情報についての機能、それらを開示することで企業報告化して、説明責任を果たす役割を論考した。くわえて、企業情報に関する質問調査が行なえるように、先行研究のサーベイおよび整理をおこなった。第三に、企業情報開示の枠組みでは、多様な情報要求を充足するため、情報作成者視点と情報利用者視点からみることで、企業情報内容の階層化をおこなった。階層化した企業情報内容を示すことで、情報利用者と情報作成者の開示ギャップに対処して、情報開示の最適化の可能性、階層化することで、企業実態を示すのための情報開示のあり方を検討した。 以上、情報開示における開示内容、開示手段、開示の質の検討をおこない、それらの検討を踏まえたうえで総合的情報開示をおこなうことで、企業実態の理解を促すことができることを論考した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目の研究は、企業情報にかかる理論研究を中心に、3つの視点から研究をすすめ、おおむね順調に進んでいると考えられる。研究をすすめた3つの視点はつぎのとおりである。第一の企業情報に関しての検討内容と、第三の企業情報開示の枠組みについては、国際会計研究学会第32回研究大会(委員長:瓶子長幸先生、日時:平成27年10月2日(金)- 4日(日) 於:専修大学)の自由論題報告(司会:松本敏史先生(早稲田大学))において「作成者と利用者の視点からみる企業情報開示の体系に関する検討」のタイトルで報告をおこなった。フロアの先生方から、従来までの企業情報概念との相違点、経営情報の概念、用途、階層型の情報開示の枠組みについて有益な御指摘を受けた。そのため、研究課題として、これらの課題を解決していく必要がある。また、第二の企業実態を示す開示フレームワーム構築および非財務情報といわれる注記情報や戦略内容、コーポレート・ガバナンス情報、MD&A情報等については、経営学や会計学を研究分野とする先生方から意見を頂戴したり、また、企業の再生分析をおこなううえで、注記情報の活用を研究した際には、実務の観点から意見を頂戴した。そして、企業実態を示す開示に関して、財務会計、管理会計、監査、ファイナンス分野の先生方とともに共同で企業情報開示にかんする調査研究(専修大学経営研究所による大型研究助成事業に関する一環)をおこない、企業である情報作成者(ここでは、主に上場企業約3350社)に対して、質問調査票を送付して研究を進めた。この事業へ参加することができた。そのため、調査研究を参考に、今後研究内容の改善を進めていきたいとと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
統合報告、IRとくに、ウェブを利用した自主的なディスクロージャーなどが活発化になり、企業のディスクロージャーが多様になっている。他方で、開示書類の整理をおこない、開示書類の重複を排除し、統合をおこなう議論がなされている。 二年目の研究では、一年目の研究内容を踏まえたふえで、まず従来の研究成果の整理とその論文化を進める。次に、実証研究の準備として位置づけ、先行研究のレビューや理論的検討により得た結果をもとに理論的なつめを行う。それによって、企業情報の評価モデルを作成し、実証研究をおこなっていきたい。とくに、企業が公表した有価証券報告書から定量情報や定性情報を検討し、情報利用者の意思決定への利用可能なことを検討する。実証研究において、財務データと定量化した定性データをもとに、企業が経営活動を継続していく能力やその要因、企業が継続的に活性化するための要因を明らかにする。最後に、情報作成者の立場と情報利用者の立場の視点から、重要な情報開示項目および情報重要度、その視点や背景は何かを理論構築をおこない、情報の重要度を重視した開示ナビゲーション構造の方向性を検討する。情報作成者の立場から、企業情報における定量情報と定性情報について、どのような視点で情報評価を行うのかに関して、情報開示項目に関する質問調査をおこないたいと考えている。これら三点の検討をおこなうことで、企業情報開示の整理・統合を行い、総合的企業情報開示の枠組みを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請した当初計画の用額に生じた差額について説明する。当初は、ノートパソコンの購入予定であったが、研究をおこなううえでデータ解析をおこなう必要が生じたため、データ解析用ソフトウエアの購入(IBM SPSS Statistics22とIBM SPSS Amosのアカデミック版)をおこなった。また、当初旅費申請した項目について、研究の打合せを1回おこない、また合同研究会として出張した。そのため、メールや別の機会によって研究内容の検討を行なった結果、当初想定よりも研究の打合せ回数や調査研究の費用が抑えることができた。また、消耗品費としても、限りある予算を有効に活用するために、物品に関しては購入金額を比較して購入したため、支出金額を抑えることができたからである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の助成金使用計画について説明する。まず、昨年度2015年度の差額分については、研究を進めるにあたり必要な、研究資料データ化のスキャナ、調査研究先での調査内容の記録録音のためのICレコーダー、研究資料印刷のためのトナーなど必要な消耗品の購入を計画している。また、当年度2016年度の助成金については、上場企業の一部に対して、企業情報開示に関する質問調査票による調査研究が主体となる。そのため、調査票郵送代、返信用郵送代、調査票や封筒にかかる印刷代金などに多くの支出が見込まれることが明らかである。また、研究成果の還元のためにも、所属する学会にて予定される研究大会などへ報告をおこなったり、学会の研究会での報告などをおこうなう費用に充てていきたいと考えている。
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