本研究は企業の制度的・非制度的情報開示について当該情報の整理・統合を図り、その全体最適を得るための研究である。昨今、企業の短期的な業績志向、ガバナンスの不備による財務報告の不信が生じており、企業が提供する企業情報に対して、説明責任、受託責任を果たすこと、その重要性が再認識されている。企業の情報開示は、情報利用者のニーズ増加により、企業のディスクロージャーは拡充されている。情報開示の拡充は、企業に情報作成コストを増加させ一方で、情報利用者には情報過多、理解の低下をまねいている。従来は、有価証券報告書に記載された財務情報中心の情報開示から、情報利用者の要求によりCSR報告書や知的資産報告書などを利用した非財務情報開示が進み、開示内容、開示手段の議論が盛んである。企業は新たな開示内容および開示手段の導入により、財務情報よりも非財務情報の割合が多くなり、非財務情報の開示量が増え、企業情報を統合開示するワンレポートや統合報告書、戦略報告書の開示手段が提案されている。 本研究はこのような状況において、情報利用者と情報作成者の観点を導入し、総合的企業情報ディスクロージャーの開示内容と開示方法を提案した。本研究での主な提案は大きく三点にまとめることができる。一つ目は、情報利用者の理解可能性を改善するために、企業情報を会計情報、財務情報、経営情報、補足情報に分けて詳細に整理し、情報作成者と情報利用者の観点を導入・組入れた開示内容を提示したことである。二つ目は、企業が提供している開示情報が有用なものとなるために、情報作成者が提供する開示情報を調査して実態を明らかにした。三つ目は、情報利用者と情報作成者の観点を導入した、企業情報の包括的な開示構造を示したことである。総合的企業情報開示において、各開示情報の関係性を示し、容易に読み取り可能にする開示構造を示している。
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