本研究は,日本企業の管理会計実践を分析するためのマネジメント・コントロール概念を明確化することを目的としている。最終年度に重点的に取り組んだ研究は,コントロール手続きの内的過程のコンピュータ・シミュレーションによる解明と利益観の測定である。 シミュレーションを適用した研究は,これまでの分析内容をさらに進展させるとともに,新たなモデル構築も行った。インタラクティブ・コントロールのダイナミックな情報共有過程に注目した研究論文は,査読コメントを受けて,論文の焦点をより明確にすべく,大幅な改訂を行った。次に,業績評価指標の集約度の柔軟役割志向に関する研究論文は,ヨーロッパ会計学会での発表を行い,そこでのコメントを受けて,改訂を行った。また,この研究に着想を得て,重要業績評価指標の測定範囲と個人の学習過程(既存知識の深化と新規知識の開拓とのバランス)との関係について,シミュレーション解析を行った。この研究は,国際会議(30th Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues)のプロシーディングに掲載された。さらに,業績評価の基本原則とも言える管理可能性原則とインフォーマティブ原理が満たされる程度に応じて,組織成員の行動にどのような違いが生じるのかについてもシミュレーション解析を行った。この論文は国内の学術雑誌に投稿した。最後に,シミュレーションという管理会計研究にとって比較的新しい研究手法の可能性については,共著者が国際学会で発表(12th Interdisciplinary Perspectives on Accounting Conference)を行った。 個人の有する利益観の測定に関しては,オンライン調査を通じて,データを収集した。この調査による発見事項は日本の学術雑誌に投稿予定である。
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