研究課題/領域番号 |
15K17171
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
酒井 絢美 同志社大学, 商学部, 助教 (00735293)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 会計学 / 監査論 / 監査契約リスク / クライアントのビジネス・リスク / 監査品質 / 中小監査事務所 |
研究実績の概要 |
本研究は,上場企業の会計監査人(以下,監査人)の交代に係る諸制度のなかでも我が国独自の開示に対して焦点を当て,理論研究,実証分析および事例研究を通じて新たな知見を導出し,監査人の交代に係る開示制度の設計や実務上の審査実施時の検討事項を提示に貢献することを課題とした。 本年度における実証研究では,特に我が国において監査品質がしばしば問題視される中小監査事務所に焦点を当て,その中でも公認会計士・監査審査会(Certified Public Accountants and Auditing Oversight Board : CPAAOB)による行政処分勧告を受けた経歴のある監査事務所を相対的に監査品質の低い監査事務所と定義した上で,監査品質の低い監査事務所のクライアントのビジネス・リスクと監査品質との間の関係について分析した。CPAAOB検査結果に基づく勧告を監査品質の代理変数として,クライアントのビジネス・リスクを表すROA,OhlsonのO-score,およびゴーイング・コンサーン注記という3つの変数について検証した結果,クライアントのビジネス・リスクが高いほど相対的に監査品質の低い監査事務所の監査を受ける傾向にあるという仮説を支持する結果が得られた。 また,事例研究については,前年に引き続き大手監査法人の新規監査契約締結時のビヘイビアに関して検証を行った。その結果,前年同様,クライアントのビジネス・リスクについて必ずしもリスク回避的ではなく,産業専門性を優先しシェア拡大を企図する可能性を示唆する結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究を主軸としつつ事例研究を並行して実施しており,現在のところ当初の計画通りに進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降においては,事例研究に焦点を当てて監査人の交代理由を分析することを予定している。その際,特に臨時報告書における退任監査人の意見開示について取り扱う。退任監査人の意見の開示は,2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用されてはいるが,これまでに具体的な意見が開示されたケースはごく僅かであり,大半が「特段の意見はありません」などといった記載に留まっている。そこで,これまでの退任監査人の意見が開示されたケースを先端ケースと位置づけ,外部データを用いて理論的・客観的に分析することにより,どのような場合に意見開示がなされるのかを明らかにし,当該意見開示がどのような意義を有するのかについての考察を試みる。
|