研究課題/領域番号 |
15K17172
|
研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
宮宇地 俊岳 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90609158)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | のれん / 減損損失 / のれん減損予知モデル / のれんの期待外減損 |
研究実績の概要 |
本研究は、保守主義とのれんの減損損失計上との関係性を分析するプロジェクトであり、2年目に該当する当年度は、のれんの減損損失計上に関する実証研究上のリサーチ・デザインを決定するうえで必要となる、のれんの減損損失計上をめぐる実証研究の先行研究サーベイを中心に行った。特に、のれんの減損損失が潜在的に発生しているにも関わらず、のれんの減損損失を遅らせる現象を研究題材とした、減損損失の適時性研究の発展を受けて、「潜在的なのれん減損の発生確率を推定するモデル(のれん減損予知モデル)」や、「のれん減損の損失額自体を推定する研究」が登場している。それらの研究を援用し、「のれんの減損損失が(潜在的に)発生していないと予想される企業が、のれんの減損損失を計上した場合の株式市場の反応」や「のれんの減損損失は発生していると予想されるが、減損損失額が期待額を超えて、期待外な減損損失が計上された場合の株式市場の反応」をめぐる研究成果が海外で蓄積されつつあることが明らかとなった。 のれんの会計処理について、「のれんの規則的償却+減損処理」を求める基準と「のれんの減損処理のみ」を求める基準とでは、前者が(相対的に)無条件保守主義的な基準にあたり、後者が(相対的に)条件付保守主義的な基準に相当すると考えられ、前者の基準の方がのれんの期待外な減損損失計上を回避できる可能性が高く、後者の基準の方がのれんの期待外な減損損失を計上する可能性が高いと考えられる。それらの考察を今後深めていく意味でも、「のれん減損損失計上に対する期待」を題材とする先行研究群の存在を把握することは有用だと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保守主義概念の検討、のれんの減損損失をめぐる実証研究のサーベイとリサーチ・デザインの決定、実証分析の実施と段階をおって研究プロジェクトを進めていく予定であり、本来であれば、2年目までに実証研究上のデータセットを揃え、実証分析まで完了させておく予定であった。しかしながら、2016年度の秋に左足首の骨を骨折してしまい、3ヶ月程度の松葉杖生活を過ごさねばならず、研究遂行上の遅れが生じてしまった。2年目までで、のれんの減損損失をめぐる先行研究のサーベイまでが完了しており、3年目は実証分析の実施とその成果の発表を行うことを目標とする。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、のれん減損損失を“期待減損”と“期待外減損”とに区分するモデルを援用し、のれんの減損損失と株式市場の反応に関する実証的な分析を行っていくことを予定している。特に、のれんの期待外な減損損失計上が株式市場に与える影響を析出し、保守主義概念との関係性の考察につなげていくことができればと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
科研費申請時点と査定結果額とに差が生じ、特に2年目にM&Aデータベースを購入するうえで研究費が不足していたために、1年目の研究費を余らせて、2年目に繰り越すことを行った。その時点でのデーターベース購入に必要となる見積もり金額と、データベース購入に実際にかかった金額との差が生じたことが主たる原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後の研究を進めるにあたって、株価との関係性を検討する必要性が生じているため、追加的に株価データCD-ROMの購入に使用することを検討している。
|