研究課題/領域番号 |
15K17175
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
福島 一矩 西南学院大学, 商学部, 准教授 (50548881)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 管理会計能力 / 吸収能力 / 経験学習能力 / 管理会計 / 組織業績 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,管理会計システムを効果的に活用するための組織能力(管理会計能力)を構成する要素を明らかにすることを目標として研究を実施した。そのために,文献レビューとこれまでの調査データに基づく検証を行った。 まず,文献レビューを行った結果,これまでの研究では,管理会計システムが期待された効果を発揮し,持続的な競争優位をもたらすには,マネジメントの目的に適合的な利用を可能にするような知識が不可欠であり,組織内外から得られた知識を活用していくことが重要であることが指摘されていた。また,知識を活用していくためには,組織外部に存在する知識を探索し,獲得された知識を検証・理解したうえで,獲得された知識を活用して新たな行動に結びつける活動や,組織がとってきた行動(経験)について組織的に振り返り(省察し),そこから次につながる教訓をひき出し,その教訓を次の行動に結びつける活動が必要であることが示唆されていた。そこで,これらの活動を可能にするような吸収能力と経験学習能力を管理会計能力を構成する要素ではないかという仮説を構築した。 つぎに,この仮説を検証するために,管理会計システムの利用と組織業績の関係に対する経験学習能力の影響を検討した。具体的には,これまでの研究では明確な説明を与えることができなかった管理会計システムのインターラクティブな利用と急進的イノベーションの関係について検討している。その結果,管理会計システムのインターラクティブな利用と急進的イノベーションの関係に対して,経験学習能力の高さやその経験学習を行えるような組織環境を整備することが重要な役割を果たすことを確認された。この結果は,経験学習能力が,管理会計システムの利用と組織業績の関係を説明するうえでキーとなる概念となることを示していると考えられ,管理会計能力を構成するひとつの要素であることが実証されたと言えるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に目標としていた管理会計能力の構成要素の明確化はおおよそできたと考えている。これまでの調査データを用いて,管理会計能力を構成する要素である経験学習能力が,管理会計システムの利用と組織業績の関係に影響を与えることが確認できた点も構成要素が明確化できたことを示す証拠と言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,管理会計能力を構成するふたつの要素が,管理会計システムの利用と組織業績の関係に与える影響を明らかにするための検証を重ねていく必要がある。平成27年度は,経験学習能力の影響についてこれまでの調査データを用いて検討したが,もうひとつの構成要素である吸収能力の影響を検討する必要がある。また,組織業績としてイノベーションを取り上げて検討を行ったが,財務業績との関係を模索することが不可欠であろう。 加えて,経験学習を通じて得られた知識と吸収により得られた知識を組み合わせることの効果も存在する可能性があり,その点についても検討することが重要であろう。 これらの課題に取り組むために,今後は,質問票調査や企業訪問調査を通じて,管理会計能力を測定し,その管理会計システムと組織業績の関係に対する影響を明らかにして行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究報告を行う学会の開催地が計画段階で決まっておらず,その分の旅費について誤差が生じたから。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については,平成28年度の実施を予定している質問票調査ならびに企業訪問調査を実施する際に利用することを計画している。
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