研究課題/領域番号 |
15K17176
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
吉川 晃史 熊本学園大学, 専門職大学院会計専門職研究科, 准教授 (20612930)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビジネス・エコシステム / 地域経済 / マネジメント・コントロール・システム / 規範的研究 / 経験的研究 / 金融機関 / 会計専門家 |
研究実績の概要 |
平成28年度では,前年度に引き続きエコシステム間の相互作用を対象としたインタビュー調査・参与観察を行い,参加企業のMCSを把握している。具体的には熊本県中小企業家同友会の協力を得て,複数社へのインタビューを実施した。熊本県同友会に所属する会員は2015年12月時点で843事業者あり,吉川(2016)による会員のアンケート調査によれば50人以下の規模を中心とする団体である。また,回答者による経営計画の策定割合は49%と約半数の会員が経営計画の策定を果たしている。中小企業家同友会では,経営理念,経営方針,経営計画を総称した経営指針の確立に向けた啓蒙活動に取り組んでいる。経営指針の確立までには一定期間かかり,試行錯誤をしながらレベルアップしていくということが聞き取り調査の結果,理解された。他方で,いかにレベルアップを図るのかというプロセスについては時間をかけて理解されなければならず,今後の課題となった。 また,熊本県高森町の観光立町計画の策定に関与しながら,DMOの組織化についてデータ収集を開始した。いかにMCSを構築するのかというなかで,経営理念,ビジョンの共有を課題としながら,震災を経て一つの方向性を組織が見出して動き出すことが分かった。そして,補助金を活用しながら活動予算を確保するが,そこで事業計画を策定することで,事業の方向性が決まり,それをもとに次年度の事業計画が策定されていくプロセスを,研究者も関与しながら,経験的事実の獲得を行い,理論と実践の差について気付きを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献レビューの実施と研究課題の抽出について実施した。また,フィールドワークを実施してデータ収集を実施,実践知の理解を進めているが,熊本地震の影響により,前半において研究時間の確保ができなかったことから,研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した文献調査やインタビュー調査,参与観察を基礎として,前年度のインタビュー調査・参与観察をフォローしながら,これまでの発見事項の一般性や特殊性についての分析を進める。分析結果について,調査先との間で議論を行うことで理論的知見の妥当性を高める(Lukka & Modell, 2010)。さらに,これまでの調査計画を総合し,ビジネス・エコシステムの相互作用を通じたMCSの変化プロセスの内容を明らかにする。加えて,組織変革を目指す企業が抱える問題点を明らかにし,こうした問題点に対してどのような対応を取りうるのかについて考察を加える。 これまでのスケジュールの遅れについては,その時点で得られたデータから研究目的にあった知見の獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の前半は熊本地震の影響で十分な研究時間の確保ができず,後半はフィールドワークに注力したため,予定していた研究会の開催を平成29年度前半にずらしたことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度においては,前年度に開催予定の研究会を実施して,ビジネス・エコシステムの専門家と議論を深めるとともに,研究データの整理のためのアルバイトを雇用して人件費及び謝金に使用する。
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