本研究の目的は、1945年以降の日本と韓国、中国における「グローバル化」と「国際化」をめぐるメディア、政策、法制度、産業、教育、市場、生活様式の展開を歴史的かつ実証的に探ることによって、戦後東アジア地域において「グローバル化」と「国際化」はどのように遂行され、どのような文化的産物を生み出したのかを明らかにすることである。とくに、アメリカン・ヘゲモニーの変容や「中核国家」として日本の役割、「東アジア大衆」のトランスナショナルな諸経験などを総合的に検討することで、東アジア文化研究への独創的かつ有意義な貢献を目指した。 3年間の研究をつうじて、アメリカの政治的かつ経済的影響力と中核国家としての日本の役割が、韓国の高度成長と産業的近代化、冷戦構造の崩壊と中国の開放などが、東アジアの国際化とグローバル化を圧縮的に促し、東アジア諸国の文化交流と各国国内の文化的正当性の確立・変容に多大な影響をおよぼしたことを明らかにした。具体的には、①60-80年代東アジアの高度成長と国際化による観光空間の拡張が都市と大衆文化のメカニズムを再構築させたこと、②国際化とグローバル化が国民国家の秩序と矛盾・葛藤することによって、文化的正当性と社会的規範が大きく変容したこと、③それらによって、東アジアの新たな文化的ネットワークが構築され、国家のレベルとは異なる形の活発な交流を遂行してきたことなどについて探った。 この研究の学術的かつ社会的意義は、40年程度の短い期間に圧縮的に進行した東アジア地域の国際化とグローバル化が、都市空間のようなマクロなレベルと大衆文化のようなミクロなレベルで同時に作用した過程を探ることで、これまで国家のレベルではみえてこなかった東アジアにおけるヒト、モノ、コトの活発な交をより明らかにし、さまざまな場を借りて活発に発信したということにあるといえよう。
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