研究課題/領域番号 |
15K17181
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
西野 史子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40386652)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 有期雇用政策 / 同一労働同一賃金 / イノベーション・エコシステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)有期雇用労働者の技能形成と正社員登用の実態を明らかにし、2)有期契約社員/正社員の関係の再編と雇用システムの変容について、実証的に明らかにしようとするものである。また本課題を基課題とした国際共同研究強化が採択され、ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所でのアンドルー・ゴードン教授との共同研究が可能となったため、平成28年度は4月1日から平成29年3月31日に帰国するまでの間、米国にて研究を推進した。 平成29年度は、その成果を踏まえ、日本において以下の3つの研究を推進した。 第一に、日本の非正規雇用政策について引き続き研究を行い、欧米および日本を対象とする文献研究の追加、日本の政策資料の分析を継続した。その結果、以下の事がわかった。日本の非正規雇用政策は2010年頃に大きな転換点があり、その後急激に拡充していった。しかしその方向性は、欧州などに見られる横断的労働市場の形成というよりは、日本的な内部労働市場にどのように包含するかという方向性であるところが非常に特異である。少子高齢化による労働力不足もあり、正社員化、限定正社員制度の活用が活発となっている。また政府による同一労働同一賃金の方針の影響もあり、正規・非正規で福利厚生や待遇を揃える事例がいくつか見られるようになった。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムと地域労働市場に関する研究を推進し、日米の統計資料調査および平成28(2016)年に実施した米国実態調査のデータを整理・分析し、研究会にて報告を行った。 第三に、平成28(2016)年に開始したシンガポールデザイン工科大学のNilanjan Raghunath准教授との共同研究を推進した。「日米における科学技術教育とジェンダー」に関する論文が米国のカーネギーメロン大学発行の学術雑誌 The Heinz Journalに掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、日本の非正規雇用政策の研究については、新しい研究が活発に発表されており、政策の変化も著しいことから、資料を読み込むための時間が必要となっている。しかしながら、研究の方向性は見えているため、引き続き研究を続行し論文として完成させていく予定である。 第二に、米国ボストンにおける地域労働市場の研究については、東京で行える調査(文献調査および東京の調査)に関しては順調に進める事ができた。米国の追加調査を2018年度に予定しているが、概ね順調に進展している。 第三に、「日米における科学技術教育とジェンダー」に関する論文は、Nilanjan准教授の迅速な推進により、論文投稿から年度内に雑誌掲載まで完遂する事ができ、非常に順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30(2018)年度は、平成29(2017)年度までに行った文献研究、資料研究、実態調査、研究報告でのコメントを踏まえ、学会報告ないし論文発表を行う予定である。 第一に、日本の非正規雇用政策についての研究については、政策文書の整理などを進めた上で、日本語での論文発表を行う予定である。また、当該テーマにつき、関連文献の書評を依頼されているため執筆する。その上で、Nilanjan准教授とともに日米非正規雇用の比較として共同論文を執筆し、米国の学術雑誌に投稿する予定である。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムについては、2017年度に行った研究報告の内容に、2018年度に行う調査の結果を追加した上で、ワーキングペーパーとして公表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本課題を基課題とした国際共同研究強化が採択され、2016年度は米国ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所に滞在して文献研究および政策資料研究を中心に行ったため、現段階では計画当初と比べて文献研究の比重が高まっている。また日本企業を対象とした調査は調査先の都合により2018年度以降に実施することになった。これらの理由により、調査に関する費用(調査旅費、テープ起こし費用、調査補助者のための謝金)が発生しなかったため、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 日本における企業・個人調査のための費用(調査旅費、テープ起こし費用、調査補助者のための謝金)として使用する。また学会報告の旅費および参加費として使用する計画である。
|