本研究の目的は、1)有期雇用労働者の技能形成とキャリア及び、2)非正社員/正社員の関係の再編と雇用システムの変容について実証的に明らかにすることである。本課題を基課題とした国際共同研究強化が採択され、平成28(2016)年3月28日から平成29(2017)年3月31日までの間は米国ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所に滞在して研究を推進した。 最終年である令和元(2019)年度は、米国での追加調査と、期間内にこれまで実施した研究の取りまとめと成果報告を行った。 第一に、日本の非正規雇用政策について引き続き研究を行い、欧米および日本を対象とする文献研究、日本の政策資料の分析を継続した。その結果、以下の事がわかった。日本の非正規雇用政策は2010年頃の政策転換以降に拡充しているが、内部労働市場への包含を目指すという点が欧米とは異なった特徴である。さらに2016年以降は一億総活躍や女性活用と連動した「同一労働同一賃金」政策が推進されているが、労働市場への実質的な影響については注視して行く必要がある。これらの成果の一部について、国際会議や、関西生産性本部人事労務研究会にて報告し、国内外の研究者・実務家と意見交換を行った。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムと地域・専門職労働市場の事例研究を推進した。平成28(2016)年に実施した現地インタビュー調査のデータ及び、令和元年(2019)年の現地追加調査のデータを分析した。その結果、ボストンが製薬産業で世界的なイノベーション拠点となった背後には、大学、起業家、ベンチャー・キャピタル、大企業、地方政府の間の緊密な連携だけでなく、活発な人材の移動や兼任があることがわかった。これらの研究成果について日本社会学会にて報告を行い、コメントを踏まえて論文を執筆し、公開した。
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