研究課題/領域番号 |
15K17183
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
南 誠 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (70614121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国帰国者 / 境界文化 / 包摂と排除 / 日中比較研究 / 国際移民 / エスニシティ / 引揚 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
本研究課題の全体構想は、中国帰国者の包摂と排除に関する総合的研究を目指して、その境界文化の日中両国の国家・地域間、世代間と男女間の比較社会学的分析を行うことである。そのため、申請者がこれまで日本での研究調査実績を参照しつつ、中国でも同様の調査を実施する。具体的には、中国政府と社会の包摂と排除のメカニズムを明らかにするために、関連政策とまなざしの文献資料調査や、当事者と親族および関係者への聞取り調査を行う。最終的には、本研究課題の遂行を通じて、中国帰国者の境界文化の特質性や、個別性と多様性を明らかにしたうえで、グローバル時代における人の移動をめぐる力学の解明と、多文化共生社会構築に関する新たな知見の析出を目指す。 今年度は本研究プロジェクトの初年度にあたり、予備調査の段階として位置づけられている。主な調査活動としては調査計画のとおり、国内での文献資料調査、国内外の調査予定地でそれぞれ5日前後の予備調査や、中国マスメディアの中国帰国者関連の記事収集とデーダベース化の作業に取り組んだ。また国際学術交流や研究成果の発表に向けても積極的に取り組み、単著1冊、学術論文4本を公表したほか、国際的な学術会議において2回研究発表を行った。 以上の研究活動を通じて、中国帰国者をめぐる差別的構造の構築のありようを明らかにしつつ、中国帰国者が生きる境界空間は単なる抑圧された場ではなく、ラディカルな開放可能性と新たな文化の生成可能性を持つ空間でもあることや、こうした境界を生成維持する諸集団の関係性に注目してこそ、個別に捉えられてきた人々の間に新たな連帯を創り出し、より良い共生社会の構想の道が拓かれていくことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の調査計画はおおむね順調に進んでいるが、研究成果の発表は当初の計画以上に進んでおり、本研究プロジェクト関連だけでも単著1冊、論文4本を公表した。また日本国内だけではなく、韓国と中国の研究者とも学術交流をし、中国の大学生を対象に講義を行ったりして、研究成果の社会的還元や、国際学術交流の向上に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はとりわけ計画通りに本調査に向けて、準備を進めていく予定である。なお予備調査はおおむね順調に実施できたものの、現場の「真実」の声をどこまで聞けるかは課題として浮かび上がってきている。今後は研究協力者の助言などを受けつつ、聞き取り対象者との信頼関係の構築に努め、調査活動を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は予備調査や研究成果の公表に専念していたため、予定していた資料整理がやや遅れている。その関係で人件費・謝金の支出がゼロとなり、次年度に繰り越す研究費の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画としては、計画していた研究調査活動のほかに、その調査活動をスムーズに推進していくために、資料整理や指導助言のための人件費・謝金の支出をも前向きに検討する。
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