本年度も昨年度に引き続き、中国において、関係者への聴き取り調査のほか、言説空間における中国帰国者にかかわる記事などの収集と分析、および、史料館での資料収集と整理に取り組んだ。なお中国外交部档案館での調査は、閲覧制限があったため、必ずしも計画通りに調査活動を完遂できなかった。これらの調査活動の他に、研究成果の発表として、学術論文などを4本公表するほか、国内外の学術会議で6回の研究報告と講演を行った。特集「多みんぞくニホン」のかたち―-多文化『共創』社会の実像」(長崎大学多文化社会学部『多文化社会研究』第4号に収録)の編集担当をも担った。 また国際学術交流を目指して、台湾中央研究院歴史語言研究所主催「毒薬猫理論:人類集団恐怖、猜疑与暴力的社会根源」プロジェクトの学術交流活動(於台北市、2017年8月)や、国際日本文化研究センター主催の国際共同研究会「画像資料(絵葉書・地図・旅行案内・写真等)による帝国域内文化の再検討」(於京都市、2018年3月)に参加した。台湾滞在期間中は、研究の深化を目指して、戦後の台湾をめぐる人びとの移動についても調査と資料収集を行い、今後の比較検討作業に取り組むためのデータベース作成にも着手した。 以上の研究活動を通じて、本研究計画の完遂を目指すとともに、暴力(排除)の社会的起源やポスト西洋社会学といった領域における中国帰国者の境界文化研究の可能性について理解を深めることができた。
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