研究課題/領域番号 |
15K17184
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒田 暁 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60570372)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 復興活動支援 / 地域社会の回復力にかんする社会学的研究 / 集団高台移転事業 / 地域コミュニティの再編 / 生業復興支援 / 当事者の聞き書き / 教育活動と復興活動の事業化 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、震災復興の中長期的な展望と政策提言のための最終準備に取り掛かるとともに、調査研究から得られた知見や実践活動の経験を取りまとめ、書籍(『被災と避難の社会学』関礼子編,2018年3月刊行、東信堂)や論考(「東日本大震災と環境社会学研究」『環境社会学研究』23号:166-190、「書評リプライ『調査』と『実践』の対話から、環境社会学の災害研究に向けて:田中氏の書評に応えて」『環境社会学研究』23号:161-165)として公表し、社会的発信を行った。また、所属する環境社会学会において2017年6月より「震災・原発事故問題特別委員会」の委員長に選出され、2年間の任期で務めている。本研究の研究/実践面での成果が一程度認知されたものと受け止めている。2018年3月には、大阪府にて「原発被災と避難」をテーマとした書評セッション(ミニシンポジウム)を委員長として主宰した。また実践面においては、引き続き東日本大震災で被災した現地における復興支援活動にかかわり続けるとともに、2017年12月、住民らの声を当事者目線でまとめた「聞き書き集」の「漁業編」(【聞き書き】北上川河口地域の人と暮らし4――宮城県石巻市北上町の浜のいとなみ)を刊行し、住民らに還元するかたちで配布した。これはとくに生業復興支援の実践の一環として、「農業編」(2014年刊行)に続くものとして申請者が中心となって、当事者の地域の生業にかんする生活史をまとめたものである。さらに2017年9月には法政大学のフィールド・スタディーツアー(野外実習)に長崎大学生らとともに参加、実施補助を地元住民らとともに行った。学生たちに対する教育効果とともに、地元地域にとっての復興活動の事業化効果という側面もある試みを行い、複数の側面から、復興支援活動の取り組みの相乗効果の発現を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「地域社会の回復力形成に向けた調査研究」に加えて「実践性」に非常に重きを置いている。その意味で、東日本大震災からの地域による復興活動とは当初予期していないような「停滞」や「障壁」が連続して発生するプロセスの連続であると捉えられる。そうした社会的な不確実性・不透明性に対しても柔軟に対応しながら、調査研究と実践の往復運動を心がける本研究のスタンスと取り組みは、一程度順応的に行うことができていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成30年度を最終とするので、研究/実践ともに総まとめの段階に当たる。震災復興活動自体は、5 年、10 年~、と続いていくことが見込まれるが、本研究はそのプロセス研究をより長期的な視野で行うべく、地元役場(北上総合支所)や復興活動にかかわるボランティアらとの協働で「当事者性と反響しあう復興史」を作成していくことを計画している。さらに本研究計画は北上町の二地区の被災経験を基にした復興モデルの構築に向けて、集団高台移転事業と生業復興を軸として、その中核部分を形成するものと位置づけているため、より一層の社会的発信(研究成果の公表)を目指したい。集団高台移転事業等がほぼ完了した後にも復興支援活動に引き続きかかわるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定どおり。小冊子(聞き書き集)の刊行の価格査定における誤差が生じた。 次年度使用計画において、研究成果を取りまとめる際に使用する文献資料の購入に充てる予定である。
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