研究課題/領域番号 |
15K17185
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
吉田 耕平 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 研究員 (90706748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害調査 / 原発事故 / 原発避難 / 事業再建 / 凝集性 |
研究実績の概要 |
初年度は職縁に基づく中間集団の変容過程について検討を行い、福島県双葉郡内外に拠点を置いていた従業員20人以上のP社(飲食)、Q 社(福祉)、R社(車両関係)の被災経過について実態調査を進めた。 その内容について見ると、P社では発災後すぐに営業を再開できたため避難先から社内に戻る働く人たちが一定数現れ、社内の士気は非常に高まった。しかし二年目に入ると災害下の仕事継続による負担が増大し、社内の関係性は変わり従前従業員が減少していくことになった。業種の異なるQ法人でも、発災直後の危機的状況を脱して半年で仮施設での営業を始め、一部の従業員が戻って働き始める。ところが同法人でも、二年目、三年目には「仮の仕事」を続けることの心的負担が大きくなり、先の見えない中での仕事継続に至っていると察せられる。 これまでの災害研究で、こういった点について正しく理解されてこなかったのは、第一に、既往の災害調査が非常事態に対応するための集団(災害組織や創発集団)に専ら関心を払い、社会集団自身の再建過程に関心をもたなかったためであると考えられる。第二に、ハザードから避難すれば災害が避けられるとする通念により、避難そのものの経過が被害の深まりを生じることを看過してきたことも考えられる。第三に、そのため、凝集性は災害復興のためのプラス要因としてみなされても、それ自体が棄損されていくことについて理解されていなかったことも考えられる。 これらの経過から浮かび上がるのは、中長期的な災害の追跡によってはじめて避難先での中間集団の再建の困難をとらえることができるという事実であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
職縁に基づく集団の調査は予想以上に深まりを見せている一方、血縁・姻縁と地縁に基づく社会集団については予定程に進んでおらず、全体としてみると計画の進捗と大きな相違がないと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
職縁に基づく社会集団の調査が予想以上に深まりを見せているため、比較調査の進捗を待たずに理論的な枠組みによる整理を試みることが全体の計画を進める上でプラスに働くと考えられる。その枠組みを念頭に家族集団や地域集団の調査を少しずつ始めていくことが望ましいと考えられる。
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