研究課題/領域番号 |
15K17193
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研究機関 | いわき明星大学 |
研究代表者 |
高木 竜輔 いわき明星大学, 教養学部, 准教授 (30512157)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原発避難 / 避難者受け入れ / 軋轢 / いわき市 / コミュニティ形成 |
研究実績の概要 |
原発避難者の受け入れ態度を規定する要因に関する社会学的研究として、本年度は(1)エスニシティ、環境問題分野の先行研究の整理を実施し、他方で(2)関係者へのヒアリングを実施することで、本研究における主内容である質問紙調査の準備をおこなった。(1)先行研究に関しては、日本における外国人集住地域に関する研究と、水俣病など公害問題の発生により被害者に対する差別のメカニズムについての研究などを参照した。その他、外国人に対する意識についての質問紙調査などを用いて本研究の調査の基本的な枠組みを整理した。先行研究の探索のなかでは、避難者の受け入れの規定要因を見ていく際に、外国人問題よりは、むしろ政治的権利の問題として見ていく方が理論形成において当てはめやすいことが明らかになった(2)関係者へのヒアリングとしては、避難者、避難者支援団体、受け入れ自治体に対して5件程度のヒアリングを実施した。ヒアリングの概要としては、震災から4年以上が経過するなかで、避難者を取り巻く状況については一定程度の変化が見られるが(たとえば仮設住宅から公営住宅への移行など)、避難者に対する受け入れ住民のまなざしには依然として厳しく捉えていることが明らかになった。他方で避難者と受け入れ住民との交流の機会は多数できており、両者をつなぐ支援団体も多数出てきていることなどが明らかになった。とはいえ、両者の交流は限定的であり、支援団体も両者の交流について慎重にならざるを得ない実態があることが明らかになった。これらの事前準備の上に、翌年度における質問紙調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は本研究に関連する先行文献を読み、あわせて関係者へのヒアリングを実施した。本来ならば本年度において質問紙調査を実施する予定であったが、先行研究の整理とヒアリングに時間がかかったため、質問紙調査の実施は翌年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施してきた質問紙調査実施に向けての準備を踏まえて、原発避難者を受け入れている福島県いわき市、郡山市、会津若松市を対象とした質問紙調査を実施する。当初は各自治体の全域を対象とした調査実施を検討していたが、その後の状況の変化を踏まえて、長期避難者向けの復興公営住宅の周辺地域に暮らす人々に限定して調査をおこなうことを検討している。その他、前年度同様関係者へのヒアリングを実施する。これまで聞いてこなかった関係者(受け入れ地域の自治体、復興公営住宅の自治会、支援団体、病院や福祉施設など)へのヒアリングを通じて、長期避難のなかでの受け入れ体制について確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時においては、初年度において質問紙調査を実施すべく予算を計上していた。しかし調査に向けた準備作業が遅れており、調査を翌年度に実施することになった。そのため多くの額を次年度に振り向けることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記で述べたように、翌年度に回した額は、その多くを質問紙調査の実施ならびに対象者への調査結果の送付のための費用に充てることを計画している。
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