本研究のテーマである原発避難者の受け入れ態度を規定する要因に関する社会学的研究として、最終年度の本年度は福島県内の三都市、会津若松市、郡山市、いわき市にて質問紙調査を実施した。 調査は2017年7月に実施した。会津若松市、郡山市、いわき市から500人ずつ、合計1500人から対象者を抽出した。対象者抽出にあたっては選挙人名簿を利用したが、各地区の復興公営住宅を二団地ずつ選び、その周囲1キロメートル以内にある投票区から250人ずつ、合計500人を抽出した。調査票は郵送にて対象者に配付・回収した。その結果、543名から回収があった(そのうち1票は無効)。有効回収率は37.0%だった。各地区の回答割合は、会津若松が31.4%、郡山市が30.4%、いわき市が38.2%だった。 以下、調査結果の概要を紹介する。「原発事故の補償で不公平感を感じる」という回答については64.0%であり、多くの人が震災6年半が経過しても賠償の不公平感を感じていた。これについてはいわき市の住民でそう思う割合が多くなっており、受け入れている避難者が多い地域ほどその傾向にある。また、原発避難者に対する意識については63.7%「お金をもらえてうらやましい」と回答しており、避難者への否定的なまなざしはまだまだ残存していた。これについてもいわき市の住民でそう思う割合が多くなっており、受け入れている避難者が多い地域ほどその傾向にある。これらから、総じて福島県内でも避難者に対する受け入れ住民の意識は地域によって異なっていることが明らかとなった。ソーシャルキャピタルとの関係については、住民層の流入が多くない昔からの地域において避難者への厳しいまなざしが強い傾向にある。 調査結果をまとめるとともに、対象者には概要版の調査報告書を作成し、送付した。その他、概要版の調査報告書をPDFにし、所属機関のホームページなどで公表している。
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