1)英国の子ども社会学の検討を踏まえた日本の子ども社会学への示唆:『子ども社会研究』誌の特集(「子どもらしさへのアプローチ3 多様な子ども」)を企画し自らも寄稿することで、世界的な研究潮流を踏まえつつ、教育的子ども観か子ども中心か、大人主導か子どもらしさかといった図式を乗り越えた子ども研究の視角が必要であることを、社会状況と理論の双方から述べ、必要な読者に届けることができたと思われる。また集大成として、現代の子ども社会学の視角をまとめた編著を2019年度中に出版できる見込みである。そのなかでは、共著者の協力を得て、日本の既存の研究視角ではとらえづらい事例と、子どもをとらえる理論的・方法論的なヒントを盛り込んでおり、本研究課題の報告としてきわめて重要な仕事となると考えている。 2)総力戦期の子ども観の揺らぎと維持に関する事例研究:前年度中に学会発表を行ったペーパーを、勤労動員と学童集団疎開における子どもの身体と既存の制度のせめぎあいから子ども期の歴史的構築論および新しい子ども社会学の陥穽を指摘する論文として組みなおし、投稿予定である。 3)現代における子どもに関する新しい価値を提案する活動の事例研究:日本のプレーパークの80年代と2010年代を比較し、時代状況の変化の中での「子ども/大人」関係について国際学会での報告を行い、英語および日本語での論文化を行っている。また、現代の新しい価値のようにも見える、子どもによる伝統芸能の保存と地域社会についての論文を投稿し受理されている。 4)間接的な成果:成人年齢の引き下げに関わる新聞取材に、本研究課題の成果を元に応答し、掲載された。よりよい生と社会の構築に向けた子ども/大人を見る視角の提案という目標の一事例となったと考えている。
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