研究助成二年目(最終年度)は、前年度までに実施した日本・関東圏およびビルマ(ミャンマー)・ヤンゴン市にて複数回実施したフィールドワークのデータを統合し、民政移管後の日緬間の越境的移住戦略について分析を加えていった。 研究成果については、まず平成28年7月にウィーン大学(オーストリア)にて開催されたInternational Sociological Association (ISA)主催の3rd ISA Forum of Sociologyで、日緬間でビルマ系難民の移住戦略にみられる格差(移動の自由度の高低など)を中心に報告した。本報告にて得られたコメントをふまえつつ、夏季休暇中に日本およびビルマにて補足調査を実施した。そのうえで、平成28年10月に九州大学にて開催された第89回日本社会学会大会で、日緬間でみられた移住戦略上の格差の発生原因を検討し、経済的・法制度的な参入障壁が発生していることを報告した。さらにビルマ系難民の移住戦略を家族単位で分析すると、民政移管後には祖国への永住帰国、日本での滞在の継続、日緬両国での分離生活といった移住戦略がみられ、ビルマ系難民の家族戦略が多様化してきたことを突き止め、これを報告した。本報告で得られたコメントをふまえつつ、研究成果は平成29年5月下旬に発行予定の難民問題に関する編著に収録して公表する予定である。また学会報告と並行して、難民支援・ビルマ関係の市民団体が開催する報告会でも研究成果の一部を発表し、ビルマ系難民の移住過程や日本の難民政策の制度構造などに関する知識を広く社会に還元した。
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