本年度は、ハンセン病経験者の生活の全体像を把握し、その生を多面的に支えるために、数箇所の国立ハンセン病療養所において、入所者・退所者や医療職(医師・看護職・義肢装具士など)に対するインタビュー調査を実施した。それによって、ハンセン病の後遺症を持つ入所者・退所者への義肢装具領域の援助について考察した。その結果、療養所コミュニティの生活者に義肢装具領域の援助を提供していくという療養所の義肢装具ケアは、外部のコミュニティから医療機関に通院するクライエントへのケア提供と異なり、生活の場の中で、必要があればアウトリーチで居室を訪問し、不断に義肢装具などの調整を行うことが出来る点で、入所者のニーズに応えやすい利点があることが示された。一方で、入所者は治療志向性よりも生活志向性を優先する傾向があるため、義肢装具士は、医療職として入所者とは一線を画しつつも、コミュニケーションや適合の繰り返しのプロセスを通じて、相互のケア観のコンフリクトを緩和し、入所者の生活をできるだけ侵襲しない補装具の提供に努めていることが明らかになった。
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