研究課題/領域番号 |
15K17208
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
本多 康生 福岡大学, 人文学部, 准教授 (50586443)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハンセン病問題 / 医療社会学 |
研究実績の概要 |
本年度は、ハンセン病経験者の生の全体像を把握し、その生を多面的に支えるために、ハンセン病療養所入所者・退所者・非入所者等に対する聞き取り調査を数箇所の療養所において実施した。さらに、現代社会の差別について扱った初学者向けテキストの中で、病による排除の例としてハンセン病問題について論じた。 日本のハンセン病問題は、国の政策による長期にわたる深刻な人権侵害の事例である。大学教育でも、主に共通教育において、「人権問題」や「差別問題」の枠組みで取り上げられてきた。しかし、こうしたアプローチは、人権やハンセン病問題に対する理解を深める利点がある一方で、生活経験の浅い学生達からは、自身とは直接的な関わりのない過去の問題として受け取られる可能性がある。前述の論文では、入所者との交流に重きを置いた学生教育・人格陶冶の視点から、ハンセン病療養所におけるフィールドワークの意義と課題について論じた。実際に、療養所を訪問して入所者のライフヒストリーを聞いた学生達の反応から、学生は入所者の語りをそのまま表層的に理解する傾向があることや、入所者の実存的苦悩を十分に理解することは容易ではないことなどが示された。現在ではハンセン病の社会問題としての側面が見え辛くなっているため、フィールドにおいては、社会事象の背景を解説する教員の的確な助言が必要であることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハンセン病経験者が現在どのような生活を送り、いかなる困難に直面しているのかについて、総合的な考察を進めているが、研究の進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、収集したインタビューデータを精査し、論文化を進めていく予定である。また、継続して当事者への研究成果の還元とアウトリーチを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度成果を論文化する作業に時間が掛かっており、研究期間延長が必要である。追加調査及び日本ハンセン病学会など関連学会・研究会での研究発表を予定している。
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