本年度は、ハンセン病経験者の生の全体像を把握し、その生を多面的に支えるために、ハンセン病療養所入所者・退所者・非入所者・家族等に対するインタビュー調査を複数の療養所や周辺地域において実施した。さらに、療養所に大学生を連れていくフィールドワークの実践について、継続的に論じた。その結果、第1に、入所者の高齢化やハンセン病に対する社会の意識の変化、入所者自身の社会からのまなざしに対する受け止め方の変化によって、現在ではハンセン病の社会問題としての側面が見え辛くなっていることが示された。第2に、教員が入所者のライフヒストリーを補足したり、入所者からの問いかけをわかりやすく説明したりすることで、学生たちはフィールドで出会った入所者や事象に対して、多角的で複眼的な見方ができるようになった。学生たちは活発な議論を通じて、入所者の経験や思いを理解し、ハンセン病問題を普遍性のある現在の問題として受け止めることができるようになったと考えられた。
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