化学物質過敏症とは、化学物質への過敏性を獲得した者が、周囲の多様な化学物質に反応し、さまざまな臨床症状を発する病である。この病の実在/不在をめぐっては、医学的・社会的論争が絶えないが、本研究は実在論に立ち、どのような病いの経験がされているのか、またどのような政策が必要とされているかを明らかにした。 フィールドワークでは、関係者24名に聞き取りを行ったほか、国内外の116文献からデータベースと年表を作成した。 これらのデータから、患者にとっての困難とは、病が社会における正統性を欠如していることであり、患者は周囲の協力を得るために代替的な病名を名のるなど、さまざまな生存戦略を採っていることがわかった。
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