研究課題/領域番号 |
15K17211
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
渡辺 拓也 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, その他部局等, 研究員 (70622067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | データベース作成 / ヒアリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は大阪都市圏における下層労働析出・編成のメカニズムの解明するところにあり、この目的を達成するために、建設労働者を囲い込み、労働力化する労務管理の制度である「飯場」に着目し、その実態把握を目指している。 本研究を進めるなかで、社会理論・動態研究所において2ヶ月に一度開かれる「下層労働研究会」に定期的に参加し、研究枠組みや調査計画について吟味している。議論の過程で大阪都市圏における建設下層労働をとらえるための基礎資料のさらなる充実と調査のための追加的な備えが必要であることが見えてきた。 大阪都市圏の建設下層労働をとらえるための基礎資料のさらなる充実を図るため、これまで情報収集を行ってきた行政機関に対して継続的な情報提供を求めたほか、別の行政機関、特定非営利活動法人等の関係者や、長年日雇労働運動に携わっている活動家などにもヒアリングを行い、新たな資料と発見が得られた。今後も適宜情報提供を求めていく予定である。 本研究では調査対象の選定をインターネット求人サイトから抽出している。調査を実施するにあたり徹底したデータ収集が必要となるため、研究補助の作業者を雇ってデータ収集を行った(平成28年度中も継続)。当初は網羅的な調査を予定していたが、データの総量が事前に想定していたものを大きく上回るため、求人データを分析した上で仮説を立て、理論的なサンプリングを行ったのちに実際の調査を行うこととなった。 具体的な研究成果として、まず 平成27年11月の日本労働社会学会の大会では本研究の成果の一部を報告した。また、社会理論・動態研究所の査読付きの研究紀要に論文を投稿し、この論文が同年12月発行の『理論と動態』8号に掲載された。翌年2月には社会理論・動態研究所主催の合評会での報告も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、実際の調査に入る前に、基礎資料のさらなる充実と調査のための追加的な備えが必要であったため、行政機関や特定非営利活動法人、労働組合関係者などへのヒアリングとデータベース作成を重点的に行った。データベースの作成は平成28年度まで継続予定であるが、データ自体は出揃ってきている。 当初の予定では本研究の目的に合致した事業者に対し、網羅的な調査票調査と聞き取り調査を行う予定だったが、事業所自体が想定より多く、回収率が低くなる懸念も出てきたため、求人データを分析した上で仮説を立て、理論的なサンプリングを行ったのちに、質的調査を主軸とした調査を行うように方針を立て直している。 研究の目的と明らかにすべき課題に変更はないものの、調査設計が申請時に想定していたものから修正が必要となった。フィールド調査の開始が当初の想定時期より遅れているという意味で区分を「やや遅れている」としているが、上述のような方針変更によるものであるため、平成27年度の成果を踏まえて平成28年度以降の研究を進めていくことで進展が見込めるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度からはじめた追加的な求人データベースの充実を受けて、平成28年度はまず求人データベースの分析を行う。データベースの分析は第一義には調査に向けた仮説の確認と理論的なサンプリングのためだが、その内容の分析自体、現在の大阪都市圏の下層労働市場の実態を把握するための有力な資料となる。データベースそのものから得られる知見を最大限引き出すよう取り組み、その成果を学会報告や論文の形でまとめていきたい。 調査についても平成28年度中から着手していきたい。理論的なサンプリングを行うとはいえ、質的調査の強みはフィールドで得られたデータをもとに探索的に調査内容を進化させ、実像をつまびらかにすることから既存の資料や数量的なデータからは引き出せない仮説を索出するところにある。データの飽和を目指して時間の許す限り、調査を進めていきたい。 また、これまでのように社会理論・動態研究所で定期的に行われている下層労働研究会に参加し、経過を報告するなかで得られるアドバイスをもとに研究を進めていく。
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