本研究の目的は、大阪都市圏における下層労働力析出・編成メカニズムを解明するところにあり、この目的を達成するために、建設労働者を囲い込み、労働力化する労務管理の制度である「飯場」に着目し、その実態把握を目指し、調査・研究を行った。 大阪都市圏の下層労働市場、特に飯場の実態を把握するために、平成27年度から平成28年度にかけての1年間、求人広告から業者の情報を集め、整理した。平成28年度には同期間を対象に、公立図書館に所蔵されているスポーツ新聞の求人広告についてもリストに整理し、データ化を行った。加えて、西成労働福祉センター(寄せ場求人)の求人業者についてもデータベース化を進めた。また、大阪府商工労働部、大阪労働局、大阪市消防局、国際研修協力機構などを訪問し、建設業付属寄宿舎(飯場)や建設労働力の 実態把握に関する現状やデータについてヒアリング調査を行った。これらに加えて、西成労働福祉センターの職員など、求人・求職実態に詳しい人たちからもヒアリング調査を行った。 本研究を進めるなかで、平成27年度・平成28年度に引き続き、社会理論・動態研究所にて隔月で開催される「下層労働研究会」に参加し、調査の進捗の報告、議論を深めた。 平成28年7月には、日本寄せ場学会のシンポジウムにて、建設下層労働市場の実態について、本研究が前提とする研究枠組みと、その研究枠組みに基づいた研究成果の一部を報告した。最終年度(平成29年度)には研究成果を論文にまとめ、査読誌に投稿し、年度内に掲載された。
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