本研究の目的は、学校不適応などの学童期、思春期のウエルビーイングに影響する、乳幼児期の関連要因を明らかにし効果的な早期支援方法を明らかにすることである。 生涯発達とエンパワメントの視点から、育児環境や子ども自身の力を引き出し、地域とのつながりを促進する取り組みにより、将来の学校不適応を予防する可能性を検証する。子どもと養育者の特性に注目し、支援を必要とする子どもと養育者への早期支援プログラムを開発、実証することより、乳幼児期から、学童期、思春期をつなぐ根拠に基づく子育て支援システムの仕組みづくりに貢献することが期待される。 平成29年度は、開発した支援プログラムの実施調整、モデルの評価を実施した。海外の研究機関と協働し、心理学、脳科学、生理学的見地から有効と考えられる、学童期および思春期のアセスメントおよび介入方法に関する研究開発に向けて研究討議、資料収集と整理、評価ツール開発と予備的検討を行った。続いて、保護者に対する調査、専門職に対するインタビュー調査、子どもに対する質問紙調査および認知機能特性、内受容感覚等に関する調査を行い、学童期、思春期のウエルビーイングに関する多角的な調査と多変量解析を実施し、影響要因を検討した。評価の妥当性の検証と並行して、子どもと養育者の特性別に、コホートデータを用いた支援効果に関する評価を行った。子どもを取り巻く環境や、家族と子どもの属性要因の影響を踏まえてウェルビーイングへの影響を検討した結果、乳幼児期の育児環境に加え、子どもの睡眠習慣等の生活習慣や社会とのかかわりが学童期および思春期のウェルビーイングを促進する可能性が実証された。また、思春期の内受容感覚や認知特性は学童期および思春期の精神的健康に関連する可能性が示され、今後は地域社会とのかかわり、生活習慣、心と体の調和を促進する支援プログラム開発の必要性が示された。
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