本研究の全体構想は、若年生活困窮者支援について、先駆的な取り組みを行っている英国との比較を通じて、個人のニーズに応じた切れ目のない総合的な支援を意味する「パーソナライズ化」と社会的企業の「ハブ機能(つなぎの役割)」による総合的な支援のあり方を検討することであった。また、平成29年度には、平成27年度・28年度に得られた情報を元に、補完調査を行いながら、日英の比較を深めると共に、論文・報告書の作成を行い、日英の関係者を交えた日英生活困窮者支援シンポジウムを開催する予定であった。 英国の補完調査としては、平成29年8月に渡英し、実施した。また、日英生活困窮者支援シンポジウムは、6月21日に愛知教育大学において、日英若者サポートシンポジウム「日英若者サポートシンポジウム:困難を抱えた子ども・若者に社会的企業は未来を切り開けるか」を開催した。英国の社会的企業Right Resolutionの実践者であるWendy Bannerman先生と愛知県豊橋市の一般社団法人東三河セーフティネットの代表理事である金田文子先生に登壇して頂き、若年生活困窮者支援の実践について議論を行った。 全体の研究成果の報告として、12月にはオーストラリアのメルボルンでの国際学会ISIRCにおいて、「Social enterprises and enhancing the employability of young people leaving care in the UK and Japan.」をWendy Bannerman先生と共同で報告を行った。 以上の結果、若年生活困窮者支援のパーソナライズ化の実態と社会的企業のハブ機能の在り方に検討を行い、日本と英国の共通点及び相違点について考察を行うことができた。両国ともに、社会的企業が個別化された支援の窓口となるとともに、ハブ機能を担っている様相が見られた。
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