本研究の目的は、日本、スウェーデン、フランスにおける家族政策がいかに人々の意識を変化させているか、政策の成立や転換による影響を検討することにある。具体的には、家族政策の歴史および世論調査を対象としている。平成30年度は、これまでの資料を整理、分析し、学会・研究会報告およびを論文の作成を行った。 平成30年4月25日、東海大学文化社会学部研究交流会において、「スウェーデンのジェンダー/家族政策に関する国際比較研究の視点」という題目で家族政策の転換と世論形成についての報告を行った 平成30年11月10日、北ヨーロッパ学会にて、「北欧における『子どもの権利条約』の受容と発展のための取り組み」という題目で北欧の子ども観および家族政策について報告を行った。 本研究期間を通して、特にスウェーデン、日本における家族政策の形成、転換および家族観の変化について、以下の知見を得て学会報告や論文発表を行った。第1に、スウェーデンにおいては1960年代の社会運動(女性運動)が、職場や家庭内における男女平等のため、ジェンダー中立的な政策を推進した。そのため、家族政策の転換が家族やジェンダー観の変化をもたらすことと相乗効果を発揮していた。しかしながら第2に、1980年代以降女性運動は家族政策を失敗と批判し、ジェンダー平等、新しい家族観への再転換を求めた。家族政策はジェンダー目的化された、つまり対象を明確にする政策へと変化していく。日本においては少子化対策が形成する時期であったために、少子化対策がジェンダー平等および新しい家族のあり方転換と結びつかなかったために、スウェーデンのような家族政策への発展が困難であった。 今後、文献研究が中心であったフランスの調査報告、およびジェンダー目的化された家族政策を実現しているノルウェーやフィンランドといった北欧の枠組みを加えることで、本研究を発展、展開させていきたい。
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