研究課題/領域番号 |
15K17231
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
金 圓景 筑紫女学園大学, 人間科学部, 講師 (40635182)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症の家族支援 / 介護のキャリアプロセス / 日韓比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日韓比較研究を通して、地域における認知症の家族支援システムを構築することである。現在、認知症の家族に対する支援政策は、必ずしも充分ではなく、自ら支援を求めない人には支援が届かないというデリバリ上の問題がある。 そこで、本研究では、家族介護者、ソーシャルワーカー、地域住民の三者への調査を予定しており、平成27年度には日本の認知症の家族を中心に調査を進めた。その際には、介護のキャリアプロセスに基づき、①介護を始めて間もない、いわゆる「介護の役割獲得」段階にいる家族、②介護中の「介護の役割実践」段階の家族、③看取り終えた、「介護の役割離脱」段階にいる家族、それぞれへの面接調査を進めており、合計16家族への調査を終え、分析作業を同時に進めている。認知症の家族とはいえ、介護を始めたばかりの段階と、長期にわたり介護中の段階、死別により介護を終えた段階では、それぞれ必要な支援内容が異なっていることが確認できた。また、最初に関わった主な機関・施設や専門職によって、その後の支援内容に差があることやインフォーマルな資源とのつながり程度によって介護負担が軽減されるか否かが関わっていることが把握できた。 また、韓国の認知症の家族への調査に向け、韓国認知症家族協会をはじめ、主な支援機関でのヒアリング調査を通して、現状及び今後の研究対象者選定に向けた事前調査を実施した。その結果、ソウルでは各区に設置されている「認知症支援センター」が、地方では「広域認知症センター」が拠点機関となっており、家族支援を進めているが、自分から支援を求めないとこれらの機関利用にはつながりにくいデリバリ上の問題があることが把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、これまでに日本国内を中心に認知症の家族、16家族を対象に支援利用に関する面接調査を進めてきており、おおむね順調に調査が進んでいる。しかしながら、介護のキャリアプロセスに基づく、段階別の調査対象者のバランスが悪く、介護を始めたばかりの「役割獲得」の方の事例が少ないため、今年度も引き続き、調査を進める予定である。 また、韓国においても今年度の調査に向けて、認知症の家族、3家族を対象に、事前調査を実施しただけでなく、現状を把握するため、関連資料の収集、分析、近年の政策動向などについても整理している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、介護のキャリアプロセスに基づく段階別に、認知症の家族に対し、それぞれ10名ずつ調査を進めることができるように、様々な家族会や支援機関などに訪問する必要がある。 また、韓国での調査の場合、主な支援機関の利用者である認知症の家族は、支援を求めてきたという共通性があるため、制度の谷間に置かれており、どの支援にもつながっておらず、一人で介護を担っている家族に出会うためには、家族会や支援機関だけでなく、幅広く様々な現場に出かける必要がある。
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