本研究では,主に東日本大震災の被災地において要介護認定者数,受給者数,給付費の伸びが大きくなった要因について明らかにすることを目的とした. 平成27年度は先行・関連研究の検討を通して,分析モデルの構築に向けた基礎作業を行った.同時に「介護保険事業状況報告月報」の複数年分(2011-2015年)のデータを用いて要介護者数やサービス受給者数の推移を分析した. 平成28年度は,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)の一環として被災地域(宮城県岩沼市)を含む日本全国30市町村に住む高齢者を対象にした調査を実施した.他方で収集できたデータの制約から分析モデルの再検討の必要性が生じた. 平成29年度は前年度に収集できたデータに制限が生じたことから分析モデルの再検討を行った.さらに医療・介護領域の大規模データの現状および課題について検討を行った.後者は全国民の医療・介護に関するデータを一元的に管理する韓国を対象とした大規模データの整備や活用の現状に関する検討を行った. 平成30年度は,①「介護保険事業状況報告月報」の複数年分(2011-2017年)のデータを用い,東日本大震災の被災地のうち,特に津波の被害が大きかった福島県沿岸部の15市町村に着目し,大震災,とりわけ津波の影響が要介護認定率やサービス受給費に中長期的にみて影響を与えているのか,②高齢者が要介護状態につながる要因を探索するため,厚生労働省が示した6つの要介護リスク(認知症・運動器・口腔・栄養・閉じこもり・うつ)のうち,認知症の前駆段階であるとされる「物忘れ」に着目し,ソーシャル・キャピタルと物忘れとの関連性の検証を被災地域(宮城県岩沼市)を日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)のデータを用いて行った.
|