本研究の目的は、就職困難者(母子家庭の母親、障害者、被災地域の住民など)に対する在宅ワークによる就労支援と、最低限生活するためにどのような生活保障システムを構築すれば良いのかについて明らかにすることである。この研究目的を達成するために、平成27年度から平成29年度に、行政機関や公益法人等へのインタビュー調査や資料収集などを実施する研究計画を策定した。平成27年度は、母子家庭の母親の就労支援に在宅ワークを活用している事例について研究した。具体的には、Z地区(都道府県単位)で実施されたひとり親家庭等の在宅就業支援事業の関係者6名にインタビュー調査をすることができた。平成28年度は、情報通信産業の在宅ワークではなく、製造加工作業の家内労働を対象とし、洋服リフォーム業の内職と西陣織の内職の実態と問題点を明らかにした。また、ひとり親家庭等の在宅就業支援事業の終了後に訓練プログラムの受講生がNPO法人を設立した事例として、3ヵ所のNPO法人へインタビュー調査を実施することができた。訓練修了後に在宅ワークで働いている母子家庭の母親4名からもインタビュー調査に協力していただくことができた。平成29年度は、被災地域における在宅就業支援事業について、東日本大震災の被災地域のNPO法人の職員へインタビュー調査を実施した。また、障害者が在宅就業に従事している事例についてもインタビュー調査を実施することができた。障害者の在宅就業を支援している団体のうち、職員4名と在宅就業障害者8名から、インタビュー調査に協力していただくことができた。上記の通り、当初の研究目的と研究実施計画に沿った形で研究を実施し、研究成果は雑誌論文(『立命館経済学』)や学会報告等(社会政策学会)で発表した。
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