研究課題/領域番号 |
15K17238
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
角崎 洋平 佛教大学, 研究推進部, 特別研究員 (10706675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 世帯更生資金貸付 / 生活保護 / 「サラ金」問題 |
研究実績の概要 |
生活福祉資金貸付の前身である世帯更生資金貸付の、戦後社会福祉政策における位置を確認しているが、今年度までに以下について明らかにしている。 第1に給付制度と世帯更生資金貸付の関係である。先行研究では、世帯更生資金貸付の導入時期が生活保護給付の緊縮時期と重なるとして、世帯更生資金貸付導入の給付(生活保護)代替目的が既に指摘されている。本研究によってさらに以下の点が確認されている。①戦後直後から生活活困窮者向け福祉貸付の構想がなされており、そこでも不十分な年金・公的扶助制度を代替する制度として、公的貸付制度が構想されていること、②こうした公的な貸付制度の担い手として当初は民生委員は想定されていなかったこと、③後年、災害・公害などの被災者についての「柔軟な対応」を貸付制度が担うことが期待されるようになったことを指摘した。こうしたなかで世帯更生資金貸付の償還率の低迷も問題になっているが、その背景には、上述のような給付による生活困窮者支援と貸付による生活困窮者支援(者)の区分の曖昧化があったといえる。 第2に民間金融制度と世帯更生資金貸付の関係である。1970年代ころからいわゆる「サラリーマン金融」が社会問題化しているが、一方で世帯更生資金貸付の利用件数は1970年代以降低迷している。世帯更生資金貸付に関する社会福祉協議会の資料においてもかかる「サラリーマン金融」(いわゆる「サラ金」)の問題が認識されており、適切な対応が求められていが、実際には世帯更生資金貸付制度運用において、十分な配慮がなされたとはいえない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者として研究を進めている15J10975、連携研究者として参加している15K03985の研究が、前倒しで研究が進んだした影響で、当該研究の進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
戦後日本の社会福祉政策における給付と貸付の関係については明らかになりつつあるが、低所得者向けの公的貸付と民間貸付の関係については不明な点が残る。とくに、なぜ社会福祉協議会や民生委員が「サラ金」問題を発生させる社会・経済情勢を問題にこしつつも、実際に被害当事者への積極的支援を実行しなかったのか(できなかったのか)という点について重点的に確認する必要がある。また年度後半には前年度までの成果も含めて論文化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者として研究を進めている15J10975、連携研究者として参加している15K03985の研究が、前倒しで研究が進んだした影響で、当該研究の進捗が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きの文献収集や資料調査のための出張旅費に使用する。
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