本研究は、戦後から現代にかけての日本の福祉的貸付事業の歴史的変遷と問題点を精査し、「金融包摂」政策の、社会的包摂政策としての可能性や限界を確認することを目的とした。本研究によって、以下のことを明らかにした。第1に、世帯更生資金貸付制度は、引揚者や戦争被災者を対象とした貸付制度を、生活困窮者一般に対象を広げようとする構想を踏まえて実現されたものであった。第2に、世帯更生資金貸付は制度的には幅広い低所得者のニーズを対象とするものとして導入されたが、貸手側の「サラ金」問題への認識不足や、他制度との連携の不備などにより、結果的には一部の零細企業や教育資金需要を充たすにとどまった。
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