本研究は、ひきこもりの要因の一つとしての「障害」と「生活困難」に焦点化し、学校におけるその予防支援のあり方を検討する。具体的には、学校での子どもの障害の気づきから、スクールソーシャルワーカー(SSW)が親や子どもの障害受容の状況を把握し、更にどのような支援が求められるのかを捉え、それに対応するSSWのあり方を検討した。本研究での障害は、軽度知的障害と発達障害者支援法に規定される、広汎性発達障害とAD/HDとする。 SSWへのインタビュー調査の結果、第1に学校で子どもの障害に気づき、支援を開始するまでに、家庭の生活状況や親の障害受容のあり方によって時間を要する場合があることから、小中高等学校それぞれの年限内で子どもへの十分な支援が困難である。そのことから小中高等学校が適切に連携する中で、子どもや家庭の情報を次の生活ステージにつなぎ、いずれの時期においても早期に支援につながるよう取り組む必要がある。 第2に子どもの障害の気づきを親に伝える上では、その親だけではなく、伝える側の教職員へのサポートが求められる。病院などで医者から障害告知がされるように、学校で何らかの支援を行うには、子ども本人やその親に対して障害の可能性を伝えることや、支援の有用性について了承を得ることが求められる。担任など教職員一人一人に任せる体制ではなく、教職員に対するサポートを学校全体で考える必要性がある。更に学校では障害の有無が判断できない状況であっても子どものニーズに応じた対応は求められる。しかし、親に家庭生活の困難さがあることで、子どもに向き合うことが阻害されることもあることから、SSWは子どもに必要な支援が届かないことも想定し、特別支援との系統的な連携を可能とする学校組織体制への働きかけや教職員へのサポート体制を整える必要がある。
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