研究課題/領域番号 |
15K17240
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
冨田川 智志 京都女子大学, 家政学部, 助教 (90441881)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 介護福祉士養成課程 / 腰痛予防 / 移動・移乗補助具 / OSHMS |
研究実績の概要 |
平成28年度は、すでに「抱上げない介護技術」を導入している社会福祉施設・医療施設の腰痛予防対策体制の現状と福祉用具貸与事業者の腰痛予防に関する認知度及び移動・移乗補助具に関する知識・技術の習得度の現状把握、介護福祉士養成課程における労働衛生教育の実態を把握するための調査票を作成のための情報収集を中心に行った。 すでに「抱上げない介護技術」を導入している社会福祉施設の介護職員を対象に作業負担に関する調査を実施し、腰痛予防対策体制に関する情報収集を行った。その結果、介護職員は特に日中業務において休憩時間以外は殆ど動作が止まることなく業務を行っていた。これらの状況は腰痛発生・悪化に大きく関係してくるものであるため、腰痛予防のためのリスクアセスメント及び労働衛生マネジメントシステムプログラムにおいては、軽い負担であっても恒常的にかからないよう、作業の実施体制、休息、作業の組み合わせの工夫を強調した教育が必要であることが示唆された。 これから「抱上げない介護技術」を導入しようとする社会福祉施設・医療施設の腰痛等の現状について研究している研究者より情報収集を行った。また、福祉用具貸与事業者に腰痛予防に関する認知度及び移動・移乗補助具に関する知識・技術の習得度の現状について情報収集を行った。その結果、腰痛予防に関する制度政策等の認知度、移動・移乗補助具に関する知識・技術の習得度は低い状況にあることが分かった。これらのことから、介護・看護専門職、福祉用具専門職養成において、腰痛予防に関する制度政策、移動・移乗補助具に関する知識・技術の習得できるような教育の充実が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実施計画では、平成28年度中に介護福祉士養成施設(4年課程)における「移動・移乗の介護」に関する科目を担当する教員を対象とした郵送調査を実施する予定であったが、現在、社会福祉施設・医療施設において「抱上げない介護技術」を導入しているあるいはこれから導入しようとしている施設が増えている状況にあるため、社会福祉施設・医療施設の腰痛予防対策体制の現状を把握し、本研究の調査票に反映すべきと判断したため、研究実施計画内容を変更し、これらの情報収集を行った。また、「抱上げない介護技術」では移動・移乗補助具を活用するため、それらの専門職者である福祉用具貸与事業者の腰痛予防に関する認知度及び移動・移乗補助具に関する知識・技術に関する情報についても把握すべきと判断したため、研究実施計画内容を変更し、これらの情報収集を行った。 現在、上記の情報収集を踏まえた上で、介護福祉士・看護師・理学療法士・産業医の各種養成教員と議論し、介護福祉士養成課程における労働衛生教育の実態を把握するために必要な調査票案を作成している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度中に実施できなかった介護福祉士養成課程における労働衛生教育の実態を把握するために必要な調査票案を早急に確定させ、プリテストを実施して質問項目を再検討した上で、質問紙調査を実施する。調査対象は研究実施計画の通り、「移動・移乗の介護」に関する科目の担当教員を設定する予定である。 9月中には、回収した調査票を整理し、データ入力、データクリーニングを実施する。また、独立変数と従属変数の関係性を分析する。関係の分析方法は、重回帰分析を実施する予定である。 11月には、データからリスクアセスメント及び労働衛生マネジメントシステムを取り入れた新たな腰痛予防のための教育内容・方法の抽出を試み、分析結果を踏まえて介護福祉士・看護師・理学療法士・産業医の各種養成教員や研究者とリスクアセスメント及び労働衛生マネジメントプログラム案を議論し、リスクアセスメント及び労働衛生マネジメントシステムを取り入れた腰痛予防のための教育プログラム案を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に実施できなかった社会福祉施設の介護福祉士の作業内容に関する観察調査を平成28年度に実施すべく、介護福祉士の作業実態をデジタルデータにて保存するために消耗品費としてICレコーダー、ビデオカメラ、三脚の購入費を平成28年度の使用額に充てていたが、平成28年度に実施した調査では撮影及び録音ができなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
介護福祉士養成課程における労働衛生教育の実態を把握するための質問紙調査が平成28年度中に実施できなかったため、作業効率を上げるために質問紙調査とWeb調査を併用して行う予定である。Web調査を行うには、インターネット上に質問項目を設定するためのリサーチサービス費が必要となるため、これらの費用に充てる。また、引き続き、腰痛予防や介護・看護技術、労働衛生に関する文献資料を収集するための購入費に充てる。その他、介護福祉士及び各種養成教員との研究打ち合わせ(調査設計、プリテスト結果の検討、情報収集、分析等)、研究成果の発表のための学会参加費及び学術雑誌への論文掲載の費用に充てる。
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