平成29年度は、介護福祉士養成課程における労働衛生の視点に基づいた腰痛予防のための「移動・移乗の介護」教育の現状を把握することを目的として、平成28年10月現在、日本介護福祉士養成施設協会会員校全401介護福祉士養成課程に質問紙調査を実施した。「生活支援技術」において『移動・移乗の介護』の単元の担当教員に質問紙への記入を求めた。 質問紙の回収率は31.9%であった。上記単元における腰痛予防のための労働衛生に関する教育は、約半数の養成課程がこれらに関する法律・指針等を教育しておらず、重要との認識も高くなかった。上記単元において87.4%の養成課程が国際的に推奨されている移動・移乗補助具を活用した介護方法や労働衛生に関する法律・指針等の掲載が希薄であり、ボディメカニクスと人力による人の抱上げ技術を基軸とした介護方法が掲載されているテキストを主に使用していた。設置している移動・移乗補助具数は、アーム及びフットサポートが取り外し等できる車いす、スライディングシート・ボードが平均してベッド数の約半数、移乗用リフトは平均1台、スタンディングマシーンは84.4%の養成課程が0台であった。(臥位)移乗用ボード、移乗用リフト、スタンディングマシーンを活用した移動・移乗の介護に関する演習を行っていない養成課程は少なくなく、必要との認識も高くなかった。上記単元において70.6%の養成課程が福祉用具専門職との連携を図っていなかった。 厚生労働省は介護福祉士養成カリキュラムを改正し、平成31年度より順次導入する予定にしているが、以上の状況にあることから、国際的な取り組みや方向性に合わせた抜本的な意識改革が必要であり、介護福祉士養成課程における労働衛生の視点に基づいた腰痛予防のための「移動・移乗の介護」教育を展開するための教育方法、教育環境、教育体制の整備・構築、教材開発が求められることが示唆された。
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