研究課題/領域番号 |
15K17245
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
城 綾実 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定研究員 (00709313)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 会話分析 / 介護職員 / 理解 / 共有 / Overlapping / 認知症高齢者対応型グループホーム / ケアカンファレンス |
研究実績の概要 |
本研究課題は,介護職員の日々の職業的実践の分析をもとに,従来言語化・可視化されてこなかった介護職員の専門性を抽出・体系化し,介護職員の専門性の社会的確立への貢献を目指すものである.具体的には,認知症高齢者のケアにあたる介護職員のケアカンファレンス(ケア実践の方針を議論するミーティング)場面を対象に,定式化と呼ばれる「自分が今,特定の対象をどのように扱うのか」を示す実践的行為が生み出される過程および構成要素を,会話分析という研究プログラムに基づいて精緻に記述し,介護職員の職能との関係を明らかにすることを目的とする. 平成27年度の成果は次の通りである. グループホームの利用者(認知症高齢者)の身体的・精神的状態の報告時に,複数の職員による発言の重ね合わせ(overlapping)が生じる場面に着目した.これまでに蓄積したデータおよび本年度収録データから該当例を抽出し,分析用コレクションを作成した上で分析を進めた.分析時の方法論的な課題と解決策の見通しに関する発表を2015年9月のワークショップで行い,その報告が『社会言語科学』に掲載された. 報告時における発言の重ね合わせは偶然生じているのではなく,状況に応じて,その報告の価値を高める(今,報告すべき内容であることを支持する)働きと,低める(報告内容を重要なものとして受け取る必要がないと位置付ける)働きの,少なくとも2種類あることが明らかになった.介護職員らは,複数の利用者の対応や介助といった複数の活動の効率的に手際よく対処するという職能としての志向と,穏やかな日常を維持するという組織理念への志向に基づき,できるだけ迅速に正確な理解共有をするために,発言の重ね合わせのような一見誰もが行いうるように見えるやり方を効果的に用いている実態を,2015年7月の国際学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度前半は,申請者の所属機関異動に伴い思うように研究時間を確保することが難しかったが,前年度まで進めていた研究をさらにデータを増やして分析し,より説得力を高めた形で国際学会で発表することができた.また,学内外の研究者とのデータセッションを通じて,【今後の研究の推進方策 等】に記載した通りの方策を立てることができた.
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今後の研究の推進方策 |
「穏やかに続いていく日常の維持」というグループホームの目的のために,波風を立てるような事柄を(a)対処するためにどのように細分化するのか,(b)現時点でその事柄をどのくらい「深刻/重大」なものとして報告するのか,(c)その事柄の「深刻/重大」さが,将来的に「増大する/軽減する」ことに関して,どのように見積もられ定式化されるのか,に着目して進めていくという見通しも立てることができた.平成28年度後半前半には数回の学会・研究会での報告を目安に分析を深めてゆき,平成28年度後半には論文執筆に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には研究代表者の所属機関異動が生じたため,当初の計画に若干の変更が余儀なくされた.研究時間の確保はできたが,予定していたよりもフィールドワークの回数が減ったため,旅費が減少した.また,フィールドワークの減少に伴い取得データも当初の見込みよりも少なくなり,分析等に関わる使用額が減少した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の進捗状況により,当初の予定よりも次年度以降研究成果として報告できそうな萌芽的結果を多く得た.従って,次年度は計画より多くの分析等に関わる経費,発表に関わる経費が必要になる見込みである.
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