研究課題/領域番号 |
15K17246
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
樋口 収 北海道教育大学, その他部局等, 特任准教授 (50625879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 福島原発事故に伴う風評被害 / 有効な風評被害対策 / 進化社会心理学 / 行動免疫システム / エラー管理理論 / 目標葛藤理論 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、まず現行の風評被害対策の一つである、一般市民への情報提供の有効性について検討した。具体的には、現在利用されているリーフレット(あるいは、それとは無関連なリーフレット)を実験参加者に提示し、リーフレットを読んだ後に罹患に対する懸念が低下するかどうかを検討した。その結果、風評被害対策として利用されているリーフレットを読んだ場合、それとは無関連なリーフレットを読んだ場合に比べて、罹患懸念が高まることが示唆された。すなわち、現在利用されているリーフレットは罹患懸念を下げるという意味で必ずしも有効ではない可能性が示された(この成果については、日本社会心理学会で口頭発表を行い、また心理学研究という学術誌に投稿した)。 そこで、現行のリーフレットを読む際(すなわち、情報を受け取る際)に、罹患の懸念を高めない方法について検討を行った。具体的には、他者に対する援助動機が高まることで、罹患に対する懸念を抑えつつ、情報を受け取ることができるかどうかを検討した。実験では(原発事故や風評被害と無関連な)援助に関するパンフレット(あるいは、援助とは無関連なパンフレット)を読んだ後、上記で用いたリーフレットを提示し、最後に罹患懸念を測定した。その結果、援助に関するパンフレットを読んだ場合に、そうではない場合と比べて、むしろ罹患懸念は高まっていた。この結果は、仮説を支持するものではなかったが、パンフレットや測定上の問題により生じていた可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は予定していた実験を実施することができ、また予定どおりに成果発表も行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果から、風評被害対策として行われている情報提供の有効性について疑問が生じた。今後はまず、慎重を期す上でも、知見の再現可能性や外的妥当性を検討してみたい。加えて、情報提供自体は重要な事柄であるため、どのような態度で情報提供を受ければ、罹患の懸念が高まらないのか、その方法について検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年末に所属の異動が決定し、引き継ぎ等の想定外の用務が増加したことと、異動に伴い前所属校での実験が難しくなったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年に実施できなかった実験・調査の費用としてあてる予定である。
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