本研究の目的は、集団状況がリスクテイク判断や、物質量の認知、表情認知についての影響を調べるものである。当該年度は物質量の認知について実験をおこなった。集団場面と個人場面では物質量の認知に関しては明らかな違いはみられなかった。また、これまでの研究成果について、第59回日本社会心理学会、作業療法神経科学研究会第4回学術集会、Society for Personality and Social PsychologyおよびRIKEN summer program、 にて発表をおこなった。全体的な結果を総括すると、当初集団の影響を想定していたが、本研究成果によって、即時で作られた実験場面での集団の効果よりも、自己に深く関わる他者の影響が個人の判断に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに、リスクテイク判断については、特定の他者と親密な関係を持つ人ほど、報酬獲得に際しリスキーな選択肢をとることが示された。 また、相互協調的自己観の影響は見られず、自己拡張理論に基づいたInclusion of Other in the Self (IOS) Scale においてのみ個人の判断に影響していた。これらの結果から、Mere belonging(他者の存在によりパフォーマンスや動機づけが高まる)といったポジティブな影響は、集団カテゴリといった認知プロセスではなく個人と特定の他者や集団のコミュニティとの情緒的な繋がりがその背景にあると示唆された。
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