研究課題/領域番号 |
15K17251
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大薗 博記 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50709467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 協力 / 社会的ジレンマ / 罰 / 制度 / 公共財問題 / リワード / ガバナンス / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的ジレンマ(SD)の解決策として提示されてきた、罰・報酬(サンクション)システムの有効性を、集団規模と制度に着目して比較検討した。具体的には、人類の発展に伴って増大した集団規模を実験的に操作し、小規模集団では個人報酬が、大規模集団では制度罰が有効であることを示すことを目的とした。これまでに、小規模集団(4人)では個人報酬によってSD協力が達成されることはわかっている。本年度は、実験室で16人集団を形成し、同様の傾向が見られるか検討した。その結果、協力の効率(1人の協力が他成員1人に与える利益)が低く、かつサンクション対象がサブグループに制限されている場合には協力は成り立たたなくなることが示された。大集団になるほど、協力の効率は低くなり、サンクション対象は限定されると考えられるため、この結果は「大集団では個人サンクションではSD協力は維持されにくい」ことを示しているといえる。さらに、制度罰(各成員が制度に支援し、ルールに基づいて集中的に罰を課す)の実験を行い、1次罰のみ(SD非協力者への罰)では協力は達成されないが、2次罰(制度に支援しない者への罰)ありの制度罰であれば、16人集団でも高い協力が達成されることも示した。これにより、大集団では制度罰が有効であることが示された。このことは、人類の発展に伴い、サンクションシステムが変化してきた可能性を示唆する。 また、どのようなルールの制度罰で、より協力が達成されやすいかを検討する実験を行ったところ、1次罰と2次罰の順番が重要であることが分かった。すなわち、2次罰が先の制度罰の方が1次罰が先の制度罰よりシステムへの支援が集まりやすく、罰が実効化されやすいため、協力が達成されやすいことが示された。有効な制度罰のルールを指摘したことは、集団での協力達成を考える上で有用な知見となるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に複数の集団実験を行い、当初平成28年度までに完成させる予定であった研究成果はほぼ得られた。さらに、申請段階の計画では検討点として述べていた、「どのようなルールの制度で協力が達成されやすいのか」について、1次罰と2次罰の順番に着目し、協力率の顕著な違いを明らかにしたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
統計的な検定に適切なサンプル数を取得するため、データ取得を継続して行う。また、集団規模の増大に伴い、機能するサンクションシステムがなぜ異なるのか、その論理的基盤を明らかにするために、コンピュータシミュレーション研究を行う。具体的には、個人サンクションについてはPanchanathan(2004)、制度サンクションについてはSigmund et al.(2010)の数理モデルを基にして、集団規模を操作して進化シミュレーションを行う。また、シミュレーション結果をもとに、「なぜ集団規模によって協力に導くサンクションが異なるか」の要因を浮き彫りにし、それを操作した実験を行い、実証的知見を得る。また、平成27年度に得られた結果を国際学会において発表し、英文論文にまとめ学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し請求を行い、それにより平成27年度後期もデータ取得を行えたが、実験参加者が予想よりも集まらず、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験データを追加して取得するために、実験施設への旅費および実験参加者への謝金に使用する。また、成果発表のために、学会出張旅費、英文論文校正費を必要とする。さらに、集団規模を操作して進化シミュレーションを行うために、20万円程度のハイスペックPCを購入する予定である。
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