研究課題/領域番号 |
15K17252
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
小宮 あすか 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50745982)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 平等分配規範 / 住居流動性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、集団成員の流動性の高まりが平等分配(貢献度によらず資源を平等に分配する分配方法)の規範を弱める可能性について、社会生態学的観点から実証的に検討することである。具体的には、集団成員が流動的であるような社会状況では、固定化されているような社会状況と比較して、i) 誰が資源を分配しない人かを知覚しにくいこと、またii) そのような人間の資源の持ち逃げを許すことから、平等分配が適応的ではないという理論的予測を、調査研究と実験研究を実施し、実証的検討を行うことにある。 平成27年度の目標は、調査研究を行い、本研究仮説の生態学的妥当性を検証することにあった。研究1では、経済協力開発機構(OECD)およびアメリカ合衆国の各州が公開している予算のデータを用いて二次分析を行い、それぞれの集団における社会保障費と転居率との相関分析を行った。また、インターネット調査のデータから、回答者の郵便番号にもとづき、回答者が住む地域における住民の移動割合とその地域の住民の平等志向とを算出し、それらの関連を検討した。この結果、いずれも理論的予測を支持して、集団成員が流動的である地域ほど平等分配の規範が薄まることが示された。 さらに、研究2として、仮想場面法を用いて、より具体的な分配場面を想定させ、貢献度によらない一定の報酬の分配(平等分配)をどれだけ好むかが本人の住んだ地域の特性や引越し経験で異なる可能性を検討することを予定していた。研究2を行うにあたり、予備調査としてインターネットを用いた調査をアメリカ・日本で実施した。データ収集は終了し、現在、データの解析を行っている途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標は、調査研究を行い、本研究仮説の生態学的妥当性を検証することにあった。予定していた2つの調査研究のうち、まず、研究1として、国・州・個人レベルのデータを扱って二次分析を行い、平等分配規範と集団・地域の転居率との関係を明らかにした。また、研究2についても予備調査のデータ収集は終了しており、分析を進めながら、現在、本調査を実施する準備を進めている。平成28年度の目的である生態学的妥当性の検証について一定の成果を収めていることから、おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査の結果に基づき、仮想場面法を用いた日米比較研究(本調査)を実施する。 また、集団成員の流動性を操作する実験研究を行い、本当に流動性の高さが平等分配規範を弱めるかどうか、その因果関係を明らかにする行動実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた、ヴァージニア大学への打ち合わせのための旅費の使用がなかったことと、調査費用を必要な形で調査を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会への参加費用、および調査費用として使用する。
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