研究課題/領域番号 |
15K17253
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
友野 聡子 (油尾聡子) 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教 (00710857)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的迷惑行為 / メッセージ / 社会構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1) 地域、(2) 世代、(3) 国という3つの切り口から社会構造の違いをとらえ、それぞれ異なる社会構造において、実行されやすく効果的な社会的迷惑行為の抑止方法を明らかにすることである。加えて、その背景にある心理的メカニズムを多様な手法で明らかにすることも目的としている。社会構造の違いによる現状を本研究で把握しておくことで、今後変化しうる社会構造に応じて、人々が実行しやすく、かつ、効果的な社会的迷惑行為の抑止方法を展望できると考えられる。 本年度は、(1) 地域差から社会構造を比較する研究1を行った。ここでは、安心社会として位置づけられる農村部と、信頼社会として位置づけられる都市部という2つの地域で実際に実行されている社会的迷惑行為の抑止方法をフィールド調査によって検討した。具体的には、社会的迷惑行為の抑止を目的として掲示されている貼り紙の写真データを2つの地域で収集し、貼り紙に使用されているメッセージを比較した。その結果、2つの地域間で使用されやすい社会的迷惑行為の抑止メッセージが異なることが部分的に示された。 なお、研究1に先立ち、以下の予備調査を行っている。予備調査では、安心社会に所属する者と、信頼社会に所属する者とで、効果的だと考え、注目しやすくなる社会的迷惑行為の抑止メッセージが異なる可能性を検討した。調査の結果、所属する社会構造の違いによって、社会的迷惑行為の抑止メッセージへの注目度が異なる傾向が一部で示された。 以上の研究1とその予備調査の成果から、地域差から社会構造の違いをとらえたときに、各社会構造において、実行されやすく効果的な社会的迷惑行為の抑止方法が異なることがおおむね示されたと言える。この成果の一部は、本年度に開催された学会にて発表された。残りの成果については、現時点では、2016年度に開催される学会で発表することが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、研究1の調査と分析を本年度中に終えることができたため、順調に進展していると言える。さらに、研究1に先だって予備調査の実施と分析も行うことができた。学会での発表も順調に行えている。しかしながら、いずれの研究においても、予測とは異なる分析結果となり、さらなる検討が必要と考えている。以上より、予定どおり研究を遂行できたものの、さらなる検討が必要であるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究1とその予備調査の成果をまとめ、学術雑誌に投稿する。(2) 世代差から社会構造を比較する研究2と、(3) 社会構造の差を国際比較する研究3も、順次進める。いずれの研究も、インターネット調査会社に調査を委託することが可能であるため、当初の予定どおりに研究を進めることができると考えている。 また、本年度には、研究1とその予備調査の結果のさらなる検討が課題として残された。研究1とその予備調査では、2つの地域間のみで社会構造の違いを把握しようとしていた。この方法では、その地域間の差の要因を特定しにくい。そこで、今後の検討では、複数の地域の比較を行う必要があると言える。この検討は、アルバイトを雇用しての大規模な調査になると考えられる。そのため、まずは、当初の予定どおりに研究2と3を進め、残された予算や時間に応じて、複数の地域の比較検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初支出を予定していたもののうち、その必要がなくなったり、大幅に支出額が少なくなったりしたものが3点あった。1点目は、研究1の貼り紙の写真データを収集するためのデジタルカメラ、ならびに、分析用のソフトウェアである。これらは、所属機関の授業内でも使用する必要があったもので、所属機関の実習費で購入したため、本助成金での購入は不要となった。2点目は、研究1のデータ収集協力者への謝金である。協力者には、授業の一環としてデータを収集してもらうこととなり、教育上、謝金が不要と判断されたため、謝金を支払わなかった。3点目は、分析・資料作成用ノートPCである。ノートPCの代わりに、安価なスティック型PCを購入したため、支出額が大幅に減少した。以上の3点で、本年度の支出が当初の予定より減少したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究3のデータ収集費用に使用したいと考えている。研究3のデータ収集にあたっては、当初の予定を変更して、利便性の高いインターネット調査会社に委託することを検討している。これにより、当初の予定よりも、データ収集費が多くかかる見込みである。この調査の委託費用に次年度使用額をあてたいと考えている。
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