研究課題/領域番号 |
15K17254
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
新谷 優 法政大学, グローバル教養学部, 准教授 (20511281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 思いやり目標 / 自己イメージ目標 / 尺度開発 / 批判の表明 / 異論の表明 / 日本文化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、思いやり目標(他者のためになることをしようとすること)は異論や批判の表明を促し、自己イメージ目標(他者にいい人だと思われようとすること)はそのような行動を抑制するかを明らかにすることである。そのために、まず、思いやり目標・自己イメージ目標尺度の改良を行った。アメリカで開発された尺度を翻訳した従来の尺度(Niiya, Crocker, & Mischkowski, 2013) は、日本文化における好ましい自己イメージを的確に反映していなかった可能性があったため、より日本文化に適した項目を追加した。複数回にわたるインターネット調査により、改良版尺度の信頼性と妥当性が確認できた。 さらに、800人の実験参加者の思いやり目標と自己イメージ目標を測定した上で、「問題を指摘すべきだが、一方で他者に嫌われる可能性のある状況」を描いたシナリオを提示し、その状況でどの程度、問題を指摘すると思うかを評定してもらった。その結果、仮説通り、思いやり目標の高い人ほど、問題を指摘すると思うと回答する傾向が見られたが、シナリオの内容によっては異なった結果になることがあることも明らかになり、調整変数が存在する可能性が示唆された。 また、批判や異論の表明を行うには、それが自分のためにも他者のためにもなるという非ゼロサム的な考え方をし、ストレスを抑制する必要があることから、思いやり目標とこれらの変数の相関を調べた。その結果、思いやり目標の高い人ほど非ゼロサム的思考をする傾向があり、そのような傾向の強い人ほど他者のために時間を提供する傾向があり、それがストレスを抑制し、ウェルビーイングを高めることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年に計画していた研究は予定通り実施できた。さらに、当初の計画にはなかったが、思いやり目標が批判や異論の表明を行うメカニズムとして、非ゼロサム的思考や他者に時間を提供する傾向、さらにそれらの変数とストレスやウェルビーイングの関係も明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、思いやり目標を高める方法を確立し、これを実験的に操作することで、思いやり目標が実際に批判や異論の表明を促すかを確認する。思いやり目標を高めるための方法には、自分にとって重要な価値観について書かせる、感謝の気持ちを喚起させるなど、いくつかの方法を試し、最も効果的な方法を模索する。思いやり目標を高めることで、他者のニーズと自己のニーズに対する考え方や、批判や異論を行う際の不安やストレスに変化が生じるかを検討する。また、これまで得られた結果を随時、学会で発表し、論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
インターネット調査委託費が、当初予定していたのとは別の調査会社を用いることで割安になることがわかり、そちらを利用したため、経費が浮いた。また、研究を計画している時点では調査参加者を自ら募集し、謝礼を支払うつもりでいたが、調査会社のモニターを利用することにしたため、謝金が必要なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
残金を用いて平成27年3月中旬から下旬にかけて、思いやり目標がストレスを軽減させるプロセスを探るためのインターネット調査を追加で実施し、118,416円を支払った。また、平成28年度7月に開催される国際学会(International Association for Cross-Cultural Psychology)は日本国内で実施されるものの、参加費が国際学会と同程度(50,000円)かかることが判明したため、平成27年度の残金をその差額に充てる。
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