研究課題/領域番号 |
15K17255
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研究機関 | 清泉女学院大学 |
研究代表者 |
石井 国雄 清泉女学院大学, 人間学部, 講師 (40705208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジェンダー・ステレオタイプ / 被服認知 / 自己認知 / ピンク・青 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては,ジェンダーを志向した好意的判断に対する影響と目標表象の介在の検証に関して,以下の実証研究を行った. 1)女子大学生のジェンダー認知に及ぼす影響 東京都の女子大学生78名を実験参加者として,ピンクの衣服を着用したり,見ることが自己認知に及ぼす影響を検討した。参加者は,ピンクまたは紺色の布を身に着ける条件,またはピンクの布を見る条件に割り当てられた.ジェンダーに関する自己認知および将来の職業に関する意識が測定された結果,ピンクの布を見る条件において,能力に関する特性と比べて対人的な特性と自分を結び付ける傾向がみられた。このことは,ピンク色が伝統的な女性ステレオタイプである「能力は低いが,あたたかい」を活性化させたためと考えられる。 2)看護学生の職業意識に及ぼす影響 首都圏の看護専門学生152名を実験参加者とした質問紙実験を行った。参加者は,ピンクの腕カバーまたは紺色の腕カバーを身に着けた状態で,看護師としての職業意識についての質問に回答した。その結果,ピンクの腕カバーを着用した参加者は,紺の腕カバーを着用した参加者と比べて,看護師キャリア意識,看護師としての高い地位を望む傾向が高くなっていた。こうしたことは,ピンク色を着用することが,伝統的な女性的職業である看護師として働くイメージをより連想させやすくしたことを示唆している。一方で,男性においてはピンク色の腕カバーを着用することによって,自分の対人的および能力的特性を低く評価する傾向がみられた。このことは,自分の性別と衣服のジェンダー性との不一致が影響している可能性がある。 これらの研究以外に,平成28年度に検討する予定の,ジェンダーを志向した視線行動に対する影響を検討についての予備調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の大学異動に伴う研究実施環境の変化により,当初の計画にあげた課題の実施年次を変更し実施している.平成27年度はジェンダーを志向した好意的判断に対する影響と目標表象の介在の検証について実証実験に取り組んだ.実験参加者の特徴を吟味した結果,当初計画に挙げた,伝統的性役割に一致・不一致な人物に対する対象への好意は検討を行わず,自己の職業キャリア意識を取り上げ,ピンク/青の影響可能性について検討した.また,平成28年度に実施予定のジェンダーを志向した視線行動に対する影響についても予備調査を実施できた.論文執筆については今後の課題であるが,概ね計画通りに進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には,ジェンダーを志向した視線行動に対する影響について実証的検討を行う予定である.どのような男性・女性が視覚的に注意を引くのかについては,研究上のノウハウが確立しておらず,適切な刺激の選択方法や呈示方法を今後詰めていく必要がある.また,これまでの研究から,ピンク/青の着衣の効果は男性において生じやすい一方で,女性においては限定的な効果となることがわかってきた.そのため,女性においてピンク/青の影響をどのように生じさせるか,その手立てを見出すことが,今後の課題の一つである.その方法の一つとして,女性に特徴的な行動である化粧の色によって操作することも検討している.これらの実証実験実施と並行して,学会発表,論文執筆を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で,平成27年度に視線計測実験を実施予定として予算を編成していたが,平成28年度に実施することに変更したため,実験のための予算を平成28年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に行う視線計測の実験のため,測定機材,刺激作成のためのソフト等を購入またはレンタルする予定である.
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